イカを喉に詰まらせて死んだイカが発見されました。

スイス・チューリッヒ大学の研究チームは、ドイツ南部で採取された頁岩板に、約1億8000万年前の古代イカの化石を2匹特定。

それがイカ同士の捕食シーンを捉えたきわめてレアな化石と判明しました。

研究は、3月16日付けで『Swiss Journal of Palaeontology』に掲載されています。

目次
獲物の重みで沈んで窒息死した⁈

獲物の重みで沈んで窒息死した⁈

化石は、アマチュア収集家のディーター・ウェーバー氏が、ドイツ南部・オームデンの採石場で発見したもので、専門家に売却後、同国のシュツットガルト国立自然史博物館に保管されていました。

チューリッヒ大学の古生物研究チームの分析の結果、現代のコウモリダコ(Vampire Squid)の古い祖先である「コウモリダコ目(Vampyromorphida)」が2匹特定されています。

コウモリダコは、別名「吸血イカ」とも呼ばれ、「タコとイカどっちなんだ」という感じですが、正確にはどちらでもありません。

タコとイカが種として分化する前から存在している生物です。

イカを喉に詰まらせて死んだ1億8000万年前の「古代イカ」を発見 獲物の重みで海底に沈んでしまった?!
(画像=捕食の様子 / Credit: Klug C. et al. 2021、『ナゾロジー』より 引用)

化石のコウモリダコは、ジュラ紀(約1億9960万〜1億4550万年前)の初期に生きていたもので、大きい方は全長47センチ、小さい方は全長16.7センチでした。

化石は、軟部組織の痕跡を驚くほど細かく留めており、大きい個体にあった8本の腕と2本のフィラメントも確認されています。

復元図に描かれているように、古代のコウモリダコは、8本の腕の他に、細長い2本のフィラメントが目の下あたりについており、狩猟に使っていたようです。

ところが、獲物を捕まえるまでは良かったものの、捕食に悪戦苦闘している間に、獲物の重みで海底の方に沈んでしまったと思われます。

研究主任のクリスチャン・クルーグ氏は「この海域は当時、中央ヨーロッパの大部分に広がる海盆であり、海底は酸素濃度がかなり薄かったのです。

そのせいで2匹ともに窒息死してしまったのでしょう」と説明します。

皮肉にも、酸素の少ない場所に沈んだおかげで腐食が防がれ、死体を漁る魚も寄り付かず、質の高い保存が可能となったようです。

イカを喉に詰まらせて死んだ1億8000万年前の「古代イカ」を発見 獲物の重みで海底に沈んでしまった?!
(画像=小さな個体の方の拡大図 / Credit: Klug C. et al. 2021、『ナゾロジー』より 引用)

一方で、今日のコウモリダコは、プランクトンやデトリタス(微生物の死骸や排泄物による微生物粒子)を主食にし、大きな獲物は食べません。

しかし、この化石が示すように、古代のコウモリダコは明らかに同種をも食べる捕食者でした。

これは初期のコウモリダコが、現生種のように低酸素領域には適応しておらず、多様な摂食戦略を模索していたことを示します。

コウモリダコがどのタイミングで同種間の捕食をやめ、低酸素域に進出したのか、こうした点が今後の研究課題となるでしょう。

参考文献
Vampire squid ancestor died in ‘eternal embrace’ with its dinner

元論文
Distraction sinking and fossilized coleoid predatory behaviour from the German Early Jurassic

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功