アパレル業界はコロナ禍で業界全体としての不振が続いており、生き残りを賭けた戦略を模索する企業が増えています。

たとえばセレクトショップの大手「ビームス(BEAMS)」は2021年2月期に初の赤字計上となる見通しですが、服を売らない新ビジネス展開を展開したり、デジタルコンテンツへ対応したりなど、時代の潮流に合わせた取り組みを行っています。

本記事では、ビームスがウィズ・アフターコロナの時代に展開する3つの戦略について解説していきます。

目次
1. 「服を売らない」新ビジネス展開
 「Ziploc」とのコラボレーション
 ランドセル展示販売会の空間ディレクション
2. いち早くDXを進めてきた
 コロナ禍のデジタル戦略は?
 ライブコマースも実施
3. 顕在化しつつある3つのニーズに対応
 1. インバウンド対応
 2. サスティナブル対応
 3. LGBT対応
さまざまなニーズに対応できる柔軟さが、ビームスの強み

1. 「服を売らない」新ビジネス展開

近年のビームスの新戦略として打ち出されているのが「ビームス ビジネス プロデュース(BEAMS BUSINESS PRODUCE)」です。

カップ麺から宇宙まで、アパレルにとらわれずにさまざまな企業や団体・自治体などに対して、ビームスが店舗運営で培った企画力でブランド開発や商品開発、イベント運営などのプロデュースを行っています。

ビームスがこの5年間で企画した企業や団体・自治体との協業は50件を超え、アパレル業界の中にあって、事業者向けのビジネスプロデュースによる服を売らないビジネスモデルを確立しつつあります。

「Ziploc」とのコラボレーション

ビームスが実際にプロデュースした例の1つとして、旭化成ホームプロダクツの商品「Ziploc」とビームスのブランド「BEAMS COUTURE」がコラボレーションしたファッションアイテムが話題となりました。

ビームス「服を売らない」新ビジネス展開、ウィズ・アフターコロナに適応する3つの戦略とは
(画像=『口コミラボ』より引用)

ランドセル展示販売会の空間ディレクション

また、アパレル商品以外でのプロデュースとして、大峽製鞄が代官山T-SITEで行ったランドセル展示販売会の空間ディレクションをビームスがプロデュースしています。

ビームス「服を売らない」新ビジネス展開、ウィズ・アフターコロナに適応する3つの戦略とは
(画像=▲ビームスがプロデュースした大峽製鞄のランドセル展示販売会の会場:ビームス公式サイトよりスクリーンショット、『口コミラボ』より引用)

2. いち早くDXを進めてきた

ビームスはアパレル業界の中でもいち早くDXを進めてきました。

2005年にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築・運営を行っています。また2016年には実店舗での会員データと自社ECサイトでの顧客データを統合してデータベースを一元化し、店頭で商品を購入した顧客に対してその商品でのコーディネートした画像をメールで送付するなど、パーソナライズしたコミュニケーションに活用しています。

さらに、実店舗と自社ECサイトの在庫を一元で管理することで、顧客がどの店舗・どの販売経路からでも商品の購入・受け取り・取り寄せすることを可能としました。

事前にオンラインで商品を取り置きし、顧客の最寄りの店舗で受け取りや試着ができるサービスも導入されています。

コロナ禍のデジタル戦略は?

コロナ禍において、1回目の緊急事態宣言では国内外約170店舗が臨時休業するなど厳しい経営を余儀なくされたビームスでは、オンラインでの発信を一層強化しています。

もともとビームスでは「公式サイトのオウンドメディア化」「店舗スタッフのメディア化」を進め、公式サイトにおいて「スタイリング」「フォトログ」「ブログ」「ビデオ」の4つコンテンツが用意されており、店舗スタッフがそれぞれコーディネートや商品などを投稿・紹介できるようになっています。

ビームス「服を売らない」新ビジネス展開、ウィズ・アフターコロナに適応する3つの戦略とは
(画像=▲ビームス店舗スタッフが投稿できる「スタイリング」コンテンツ:ビームス公式サイトよりスクリーンショット、『口コミラボ』より引用)

また、ビームスの公式YouTubeチャンネル「BEAMSテレビ」内にて、スタッフの日々の暮らしや趣味など、楽しく生活するための工夫などを紹介する「BEAMS AT HOME VIDEO」を2020年4月から配信開始しました。

このようにスタッフ自らが情報発信していくことで、実店舗とオンライン上とに関わらず共感した顧客がファンとなってコミュニティを形成し、そのコミュニティに対してさらなる情報を発信するという、新しいマーケティング手法を戦略として取り入れ、力を入れています。

ビームス「服を売らない」新ビジネス展開、ウィズ・アフターコロナに適応する3つの戦略とは
(画像=▲ビームス店舗スタッフが出演・ライフスタイルを紹介する「BEAMS AT HOME VIDEO」:YouTubeのビームス公式ページよりスクリーンショット、『口コミラボ』より引用)

ライブコマースも実施

2020年3月27日、ビームスは自社初となるライブコマースを実施しました。

ビームスのクリエイティブディレクターの中村達也氏と「BEAMS F」ディレクターの西口修平氏が出演し、ビームス自社サイト内特設ページでの約1時間の配信で6,000人以上が視聴、ライブコマースの配信ページを経由した収益を含むと約100万円を売り上げました。

3. 顕在化しつつある3つのニーズに対応

ビームスはアパレルとして最新の流行やトレンドを取り入れるだけでなく、社会的な情勢や意識の変化などについても常に必要な変革を意識して取り入れている企業だといえます。

ビームスの「インバウンド」「SDGs」「LGBT」に対するそれぞれの対応について紹介します。

1. インバウンド対応

ビームスは2015年に日本各地の商品を紹介する新業態「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」を立ち上げ、2016年には新宿に拠点となるショップ「ビームス トーキョー(BEAMS TOKYO)」をオープンしています。

日本の伝統工芸などの匠の技からオタク文化まで、ファッション・アート・ライフスタイルなどさまざまな角度での日本文化をインバウンドへ発信するキュレーションショップです。

コロナ禍が明け、インバウンドが戻ってきた暁には、こうした対応が売上に大きく貢献することになるでしょう。

ビームス「服を売らない」新ビジネス展開、ウィズ・アフターコロナに適応する3つの戦略とは
(画像=▲日本各地の商品を紹介する「BEAMS JAPAN」:公式サイトよりスクリーンショット、『口コミラボ』より引用)

2. サスティナブル対応

ビームスでは、2015年の国連サミットで制定された「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」に賛同し、一部の製品の加工に取り入れています。

ビームスのメディカルユニフォームブランド「ビームス メディカル(BEAMS MEDICAL)」の生産拠点であるヤギコーポレーションでは、リサイクルシステム「YES」が備えられています。

着用済の自社製品のユニフォームを回収し、特殊処理装置で固形燃料に作り変え専用ボイラーで燃焼させることで、それから発生する熱エネルギーを発電やプレス加工する際のスチーム発生に利用するなど、化石燃料の使用削減とCO₂削減を行っています。

3. LGBT対応

ビームスは一人ひとりのパーソナルな生き方がすべて違い、またそのどれも本物であることを尊重する気持ちから、セクシュアリティの多様性としてLGBTコミュニティをサポートしています。

多様な個性を持つ個人が幸せを追求できる社会の実現を目指すイベントの「Tokyo Rainbow Pride」や、セクシュアル・マイノリティをテーマとする映像作品を紹介する映画祭「レインボー・リール東京」への協賛を行い、また、社内制度として同性パートナーシップ登録制度を導入しています。

さまざまなニーズに対応できる柔軟さが、ビームスの強み

流行やトレンドへの対応ももちろんのこと、LGBT対応など時代の潮流にも敏感に対応し、取り入れて変革できる柔軟さがビームスの強みだといえます。

また、店舗スタッフのメディア化による名前のある個人としての情報発信、顧客へのパーソナライズされたサービスなどの深い顧客体験が、スタッフや店舗、ひいてはビームスという企業・ブランドに対する信頼感を醸成しているといえるでしょう。

提供元・口コミラボ

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