世界が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の存在に気づいてから、すでに1年以上が経ちました。

ウイルスのような目に見えない敵は、最初の蔓延を捉えられず、気づいた頃には時すでに遅しという状態になりがちです。

しかし、イタリア・IMTスクールは最新研究で、新型コロナウイルスの確認以前に、ツイッター上で感染拡大の兆候が現れていたことを発見しました。

研究チームは「ツイッターが疫病学の予測ツールとして活用できるかもしれない」と話しています。

研究は、1月25日付けで『Scientific Reports』に掲載されました。

目次
ツイートから「見えない感染」を特定?
のちにアウトブレイクが報告されたエリアと一致!

ツイートから「見えない感染」を特定?

研究チームは、2014年12月〜2020年3月1日までのツイートから、ヨーロッパの主要な7言語(英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポーランド語、オランダ語)で打たれた「肺炎」というキーワードを含むすべてのツイートを集め、独自のデータベースを作成しました。

「肺炎」が選ばれた理由は、新型コロナ感染症(COVID-19)の最も特徴的な疾患であることや、2020年のインフルエンザシーズンの流行がその前の数年間より軽度であったこと(「肺炎」がコロナに関連している可能性が高い)などです。

チームはその後、2019年12月〜2020年1月までの間、つまり、2019年12月31日に「最初の原因不明の肺炎症例が特定された」とWHO(世界保健機関) が発表してから、2020年1月21日に「COVID-19が重篤な伝染病である」と公式に認定されるまでの数週間において、「肺炎」と言及したツイート数を過大評価しないようデータベースを調整しました。

調整をしなければ、すでにCOVID-19と認識されたツイートやリツイート、マスメディアの報道ツイートなどが混ざってしまい、アウトブレイクの第一波が正確に特定できなくなるからです。

そして分析の結果、2020年1月の時点ですでに対象となったヨーロッパの国のほとんどで、「肺炎」に言及したツイートが増加していました。

新型コロナ発見以前にアウトブレイクの兆候が「ツイッター」に現れていた 疫病学の予測ツールとなる可能性
(画像=(a )2019年12月〜2020年1月の「肺炎」ツイート数、(b)2019と2020の冬期間における相対的変動率 / Credit: nature、『ナゾロジー』より引用)

例えば、イタリアでは、2020年の最初の数週間の「肺炎」ツイートの増加率が、2019年の同月同週より明確に高くなっています。

イタリアの最初の感染者は2020年の2月21日に確認されているので、アウトブレイクの兆候が、その数週間前にすでにツイッター上に現れていたことになります。

フランスも同じパターンを示しましたが、イギリス、スペイン、ポーランドではそれより2週間ほどの遅れが見られました。

のちにアウトブレイクが報告されたエリアと一致!

チームはまた、1万3000件以上の「肺炎」ツイートを地理的に特定し、それらがイタリアのロンバルディア、スペインのマドリード、パリを中心としたイル・ド・フランス地域など、のちにアウトブレイクが確認されたエリアに集中していることを発見しました。

さらに、「咳(空咳)」というキーワードで新たにデータセットを作成したところ、同じように、2020年2月の感染拡大の数週間に、ツイート数が明確に増加しています。

新型コロナ発見以前にアウトブレイクの兆候が「ツイッター」に現れていた 疫病学の予測ツールとなる可能性
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

研究主任のマッシモ・リッカボーニ氏は「これはツイッターが疫病の予測ツールとして十分に機能しうることを示します。

新たな感染症が蔓延する前に、最初の兆候を突き止め、アウトブレイクの発生率が高い地域を特定できるようになる」と指摘します。

とくに現在のコロナパンデミックは、世界的に早期対処が遅れており、多くの政府が最初期の感染源を見逃していました。

リッカボーニ氏は「公衆衛生当局がソーシャルメディアも監視することで、各地域での再流行のリスクを軽減できる可能性がある」と話しています。

今後は、私たち市民の声がアウトブレイクを止める鍵となるかもしれません。


参考文献

COVID-19 warnings were on Twitter well before the outbreak of the pandemic

元論文

Early warnings of COVID-19 outbreaks across Europe from social media


提供元・ナゾロジー

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