地球温暖化は現在進行形で私たちに影響を与え続けています。
最近、中国科学院に所属する海洋物理学者Yuping Guan氏ら研究チームは、約80年後の2100年には、北半球の夏が6カ月も続くと予測しました。
これは遠くない将来、人間の健康や農業、生態系が劇的な影響を受けていくことを意味します。
研究の詳細は、2月19日付けの科学誌『Geophysical Research Letters』に掲載されました。
目次
過去60年間で夏は17日も延長していた
2100年には夏が6か月続くことになる
過去60年間で夏は17日も延長していた
研究チームは将来の気候変動を予測するために、まず過去の気候がどのように変化してきたか調査しました。
1952年から2011年にわたって毎日の気候データを調べ、約60年間における最高気温の平均値と最低気温の平均値を算出。
そしてそれを各年に当てはめ、平均値の上部25%を夏、下部25%を冬と定義しました。
例えば、分かりやすく最高気温の平均値を40℃、最低気温の平均値を0℃とするなら、30℃以上が夏、10℃以下が冬と定義されます。
これにより、北半球の四季がそれぞれどれくらいの期間続いたのか、年ごとに計測できます。
分析の結果、1952年から2011年にかけて夏の期間が平均78日から95日に延長していたと判明。
逆に冬の期間は76日から73日に短縮していました。そして春は9日、秋は5日それぞれ短縮していたとのこと。
さらに春と夏の開始時期は徐々に早まっていき、秋と冬の開始は遅くなっていきました。
また地中海地域とチベット高原では、季節サイクルが特に大きく変化していました。
2100年には夏が6か月続くことになる
続いて研究チームは、これらのデータと気候モデルを元に、将来の四季の変化を予測することにしました。
その結果、2100年の北半球では、夏が5月上旬に始まり10月中旬まで続く可能性があると予測されました。
80年後という遠くない将来では、夏が6か月も続くかもしれないのです。
これは暖かくて過ごしやすい日が増えるという意味でしょうか?
研究チームによると、そうではないようです。四季の大幅な変化は私たちの健康や生態系に大きな影響を与えるおそれがあるとのこと。
人々はより暑くて長い夏に苦しむのです。また冬が短くなると気候が不安定になり、寒波や嵐が頻繁に生じるかもしれません。
また、アレルギー性花粉が空気中に長く留まるようになったり、病気を運ぶ蚊が爆発的に広まったりするようです。
もちろんこの予測は、過去の気候変動の傾向がそのまま続いた場合のものです。
そのため改めて地球温暖化に目を向け、世界的な対策を実施するなら、この予測を覆せるかもしれません。
いずれにせよ、夏が現在進行形で延長していることをすべての人が早急に知るべきでしょう。
参考文献
Summers May Last Nearly Half the Year in the Northern Hemisphere by 2100
元論文
Changing Lengths of the Four Seasons by Global Warming
ライター:大倉康弘
得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者:やまがしゅんいち
高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?。
提供元・ナゾロジー
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