トヨタ・ヤリスはヴィッツの海外名で、ヴィッツと同じく初代モデルは1999年から販売している。今回4代目が発売されるタイミングで、ヴィッツの名前は廃止されヤリスに統一された。ヤリスは3代目ヴィッツと何が違うのだろうか?

「ヤリス」の前身「ヴィッツ」とはどのような車だったのか?

(写真=「シアンメタリック×ブラック」グレードHYBRID Z 1.5リッター 4WD、撮影=鈴木博之)
(写真=「コーラルクリスタルシャイン×ブラック」グレードHYBRID G 1.5リッター FF、撮影=鈴木博之)

「ヴィッツ/ヤリス」は1999年にスターレットの後継モデルとして誕生し、2010年発売の3代目ヴィッツまで続いたが、今回のフルモデルチェンジで車名が「ヤリス」に統一された。3代目ヴィッツ/ヤリスは世界で年間約50万台も販売され、大成功を収めたコンパクトカーの一つと言えるだろう。

今回一般公開された新型「ヤリス」には、トヨタ初のさまざまな技術が投入されている。

  • 新世代1.5リットルハイブリッドシステム
  • 新型直列3気筒1.5リッター直噴エンジン
  • プリクラッシュセーフティ
  • アドバンストパーク

    などがその一例だ。特に押さえておきたいポイントを紹介していこう。

ポイント1 新型直列3気筒エンジンを採用 なかでも1.5リットルハイブリッドに注目

(写真=トヨタ自動車)

ヤリスには、4つのパワートレインが用意されている。エンジンはすべて直列3気筒で、エンジンとトランスミッションの種類、駆動方式は以下のとおりだ。

エンジン トランスミッション 駆動方式
1.0リットルガソリンエンジン Super CVT-i 2WD(FF)
1.5リットルダイナミックフォースエンジン Direct Shift-CVT 2WD(FF)または4WD
6速マニュアル 2WD(FF)
1.5リットルダイナミックフォースエンジン
(リダクション機構付のTHS Ⅱ)
2WD(FF)またはE-Four(電気式4WDシステム)

新型の直列3気筒エンジンになり、ロングストロークやバルブ狭角の拡大などの高速燃焼技術によって、優れたパワーと燃費性能を両立させた。なかでもTNGAの思想に基づいた「1.5リットルダイナミックフォースエンジン(リダクション機構付のTHS Ⅱ)」は、モーターのトルクが発進時の加速感を向上しつつ、燃費向上にも貢献している。

ポイント2 先進の予防安全システムや駐車サポートも初搭載

(写真=トヨタ自動車)

ヤリスには、「プリクラッシュセーフティ」や「アドバンストパーク」などの先進安全技術も搭載されている。

先進予防安全パッケージ「プリクラッシュセーフティ」

「プリクラッシュセーフティ」とは、歩行者検知(昼、夜)と自転車運転者検知(昼)を行うことで、衝突回避支援や被害軽減をサポートする先進の予防安全パッケージだ。事故発生率が高い交差点右折時に、前方から来るクルマや自転車、歩行者を検知する。

進化した駐車支援システム「アドバンストパーク」

「アドバンストパーク」は高度駐車支援システムのことで、駐車が苦手なドライバーに対し、ハンドルだけでなくアクセルやブレーキも制御することで駐車を支援する。事前に駐車位置を登録しておけば、白線のない駐車場でも後退駐車、縦列駐車をサポートしてくれる。

2030年に「事故ゼロ」を目指すトヨタの姿勢は、このヤリスからも見て取れる。

ポイント3 家電使用や運転席シートなど快適さをサポートする装備も

(写真=トヨタ自動車)

高性能エンジンやドライバー支援システムだけでなく、車内の利便性・快適性を高める工夫も施されている

1,500Wのコンセントを標準装備し一般家電が使える

新型ヤリスのハイブリッド車は、「移動する電力」としても利用できる。レジャーシーンで家電を使う時だけでなく、災害時や緊急時にも1,500Wまでの電力を供給できる。USBポートからの給電はもはや当たり前になりつつあるが、家庭用コンセントで1,500Wでまで給電できるのは頼もしい限りだ。

運転席の位置を記憶し前席はシートが回転&傾く

「イージーリターンシート」は手動操作で運転席の位置を記憶するメカニズムで、「Turn Tilt Seats」は運転席と助手席のシートが回転し、さらに傾くため、スカートや着物を着ている場合でも乗り降りが楽になる。これは腰・背中の痛みがある人や、筋力が低下している高齢者などにも優しい機能と言える。

これらの機能は、トヨタ車に初めて装備された。

ヴィッツからヤリスの変更点は?

新型ヤリスは、エンジンからプラットフォームまで3代目ヴィッツを刷新している。3代目ヴィッツにはなかった上記のようなシステムが、数多く搭載されているのだ。車名もヤリスと世界共通の車名に変わったため、変更点は「すべて」といっていいだろう。

ちなみに車名の由来は、ヴィッツがドイツ語の「WITZ(才気、機知)」から、ヤリスは「Charis(優雅、上品)」を象徴するギリシア神話の美の女神からだという。

現時点(2019年11月)でわかる新型ヤリスの諸元・スペックを記しておこう。

新型フィット発売され、コンパクトカー市場の激戦が再燃!?

ヴィッツ/ヤリスは全世界で累計800万台以上、フィットは750万台以上販売されていて、永遠のライバルと言われている。

4代目となる新型フィットは東京モーターショー2019で発表され、「BASIC(ベーシック)」「HOME(ホーム)」「NESS(ネス)」「CROSSTAR(クロスター)」「LUXE(リュクス)」と個性豊かな5タイプが登場した。

ハイブリッド車には、2モーターハイブリッドシステムである「e:HEV(イーエイチイーブイ)」が搭載されるが、これはホンダのコンパクトカーとしては初めてだ。

優しいルックスに刷新されたフィットに対して、ヤリスはWRCで活躍しているだけあってグリルが大きくなったり、ヘッドライトがスポーティーなものに変更されたりしている。

フィットの価格は未定で、当初2019年10月の発売を予定していたが、2020年2月に延期された。ヤリスのほうも価格は未定で、発売は2020年2月中旬、ガソリン車の4WDは2020年4月に発売される。ライバルらしく発売時期も重なっており、その意味でも注目すべき2台と言えるだろう。

【諸元・スペック】

全長×全幅×全高(mm) 3,940×1,695×1,490 最小回転半径(m) 5.1
ホイールベース(mm) 2,550 ドア数 5
トレッド(mm) F1,475/R1,480 タイヤサイズ 185/55R16
エンジン 直列3気筒(+モーター) 標準色 12色
排気量(L) 1.0/1.5/1.5(HYBRID) ツートンカラー 6パターン
トランスミッション CVT/iMT/電気式無段変速機
駆動方式 2WD(FF)/4WD

文・鈴木博之(フリーランスライター)

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