その結果、感受性テストでは男女とも、客席にいる女の子の存在によって誘発された少年たちの歌声の変化に気づいており、歌の差異を聞き分けていることが示されました。
しかし興味深いことに、男性の参加者は両条件での歌声に好みの違いを示さなかったのに対し、女性の参加者は嗜好性テストにおいてブーストされた少年の歌声の方を好む傾向が見られたのです。
これは少年たちの頑張りがちゃんと女の子に伝わっていることを示唆します。
ちなみに合唱後のインタビューで、少年たちは客席に女の子がいた2回目の方が合唱が上手くいったと感じていました。しかし、合唱団の誰も少女たちの注意を引こうとしたことは認めなかったそうです。

また、今回の結果は生物学的にも興味深い洞察があるといいます。
ケラー氏によると、カエルやコオロギではメスを惹きつけるために集団で協調して合唱しますが、それと同時に自らの繁殖確率を高めるため、自分だけ目立った鳴き方をすることがよくあるというのです。
これは集団の中で「協調」と「競争」が併存するという生物に特有の行動です。
もしかしたら、人間の合唱にもこれと同じ現象が働いているのかもしれません。
なお、聖トーマス教会少年合唱団によるバッハの讃美歌はこちらから聴くことができます。
(※本記事は2023年に投稿したものを再編集してお届けしています)
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参考文献
Singing by boys’ choir ‘sounds more brilliant’ when girls in audience
https://www.theguardian.com/science/2023/nov/08/singing-by-boys-choir-sounds-more-brilliant-when-girls-in-audience