東京モーターショー2019で日本導入が発表された、メルセデス・ベンツのプラグインハイブリッドFCV「GLC F-CELL」。この車種はドイツと日本でのみ発売される予定だが、どういった特徴があるのだろうか。この究極のエコカーについて紹介しよう。

「プラグインハイブリッド燃料電池」は「ハイブリッド」と何が違うのか?

エコカーと聞くと、電気と内燃機関を動力とするハイブリッドを思い浮かべる人が多いだろう。今回メルセデス・ベンツが発表した「プラグインハイブリッド燃料電池」とは、何が違うのだろうか。

FCV(燃料電池自動車)とはどのようなものか?

FCV(燃料電池自動車)の仕組みを簡単に見ていこう。FCVは、水素を燃料にして酸素との化学反応で発電した電気エネルギーを使い、モーターを回して走る自動車のことだ。FCVは水素を燃料にすることで以下のようなメリットがあるため、「究極のエコカー」と言われている。

  • 高効率
  • ガソリン車に匹敵する航続距離
  • 短い充填時間
  • 走行中に排出するのは水のみ

    世界で初めてFCVを量産化したモデルが2014年に登場したトヨタの「MIRAI」で、2019年11月現在の価格は740万9,600円(税込)、航続距離は約650kmだ。

「GLC F-CELL」が採用するプラグインハイブリッド燃料電池とは?

(写真=鈴木博之)

「GLC F-CELL」に採用されたプラグインハイブリッドFCVは、燃料電池自動車でありながらプラグを介して外部から充電することもできる。つまり回生ブレーキにより発電した電気も、車体後部に搭載したリチウムイオンバッテリーに貯めておくことができるのだ。

燃料電池とバッテリーという2つの電源を持つことで、それぞれの特性を生かすことができる。たとえば長距離ドライブでは燃料電池、加速にトルクが必要な時はバッテリーといった使い分けができる。

水素が残りわずかになっても、バッテリーだけで41kmは走れるため、水素ステーションや充電ステーションまでは走行できるだろう。このように、プラグインハイブリッドFCVは燃料電池自動車の不安を軽減してくれる。

「GLC F-CELL」の4つの特徴 パワートレイン、エクステリアなど

次は、「GCL-CELL」の特徴を見ていこう。

2つの電源を持つパワートレイン

(写真=鈴木博之)

GLC F-CELLは燃料電池とリチウムイオンバッテリーという2つの電源を持つうえ、水素タンクは世界標準の700気圧タンクに約4.4kgの水素を充填できる。水素の補給時間は3分ほどで、水素のみの航続距離は336kmだ。

車体後部に搭載されたリチウムイオンバッテリーは、家庭や充電ステーションで6.0kWまでの交流普通充電ができ、また回生ブレーキによって発電した電気を13.5kWhまで充電できる。

電力は最高出力200ps(147kW)、最大トルク350Nmを発生し、燃料電池の航続距離336kmとバッテリーの航続距離41kmで、合計377km走行できる。

3つのドライブモードと4つのシステムモード

(写真=鈴木博之)

特性の異なるドライブモードを設定することで、電力消費率や快適性、アジリティなどを変えることができる。ドライブモードは、以下の3つだ。

  • 快適性を重視したデフォルト設定の「コンフォート」
  • 効率を重視し電力消費量を抑えた「エコ」
  • スポーティーな走りを重視した「スポーツ」

    また、システムモードは以下の4つが用意されている。

  • 2つの電力源を効率良く使う「ハイブリッド」
  • 燃料電池を電源として、高電圧バッテリーの充電状態を一定に保つ「F-CELL」
  • 高電圧バッテリーのみを使う「バッテリー」
  • 水素を補給する前にバッテリーに充電することを優先する「チャージ」

「F-CELL」のロゴが入ったブルーのデカールをサイドに装着したエクステリア

(写真=鈴木博之)

GLCクラスの中での差別化を図るために、フロントバンパーはクリーンなイメージの専用デザインになった。EQブランドを象徴するブルーのアクセントがフロントグリルとサイドスカート、リアバンパーに施されている。

サイドには、燃料電池自動車だということが一目でわかる「F-CELL」のロゴが入ったデカールを装着。アルミホイールは、空気抵抗の低減にも寄与する10スポークの大径20インチを採用している。

テレマティクスサービス「Mercedes me connect」を標準装備

「Mercedes me connect」は、クルマが通信することでドライバーの利便性を向上させる先進的なサービスで、このテレマティクスサービスも標準装備。

たとえば「安心安全サービス」には、事故検知時または車内にあるSOSボタンを押すとコールセンターが消防に連絡する24時間緊急通報サービスがある。「快適サービス」では、スマホの操作でドアの開錠・施錠ができる。他にも、専用ボタンを押すことで24時間365日コンシェルジュが対応してくれる「おもてなしサービス」などがある。

世界の次世代自動車の普及率は?日本と比較

燃料電池自動車は、大気汚染物質や温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車だ。実際どのくらい売れているのか、2017年の世界のパワートレイン別生産台数を確認してみよう。

  • 従来車 9,095万台(96%)
  • HV 277万台(3%)
  • EV 90万台(1%)
  • PHEV 46万台(05.%)
  • FCV 0.4万台(0.005%)

    (国土交通省/経済産業省「EV/PHV普及の現状について」より) 日本の2017年度の新車販売台数を見ると、従来車が275万台(63.3%)、FCVが0.07万台(0.02%)であり、次世代自動車の普及率は高いことがわかる。

    政府は「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」や「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金」を導入することで、世界的に伸び悩んでいるEVやFCVの国内普及モデルを確立し、その海外展開を促進しようとしている。

これからもゼロエミッション車に期待したい

GLC F-CELLは、先進技術への関心が特に高く、水素ステーションが整備されているドイツと日本のみで販売される。デリバリーは2020年中頃の予定だが、最新テクノロジーに興味がある人は一度見に行ってみるといいだろう。

【諸元・スペック】

航続距離【燃料電池】(km) 336 最大出力(kW) 147
航続距離【リチウムイオンバッテリー】(km) 41 最大トルク(Nm) 350
水素補給時間(分) 3 バッテリー容量(kWh) 13.5
水素タンク容量(kg) 約4.4 ステアリング

価格1,050万円(税込)

文・鈴木博之(フリーランスライター)
 

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