深海世界には、まだ科学の知らない生き物たちが無数に潜んでいます。

米モントレー湾水族館研究所(MBARI)の最新研究で、カリフォルニア沖の水深3000〜4000メートルにおいて、これまで未記載だった3種類の深海魚が発見されました。

いずれも「クサウオ科(Liparidae)」に属する魚で、ピンク色の体を持つもの、全身が黒いもの、細長く滑らかな体をしたものと、姿も性質も大きく異なっています。

研究の詳細は2025年8月27日付で科学雑誌『Ichthyology & Herpetology』に掲載されました。

目次

  • 未知の深海に広がるクサウオの世界
  • 3種の新顔「デコボコ」「クロ」「ホソ」のクサウオたち

未知の深海に広がるクサウオの世界

画像
クサウオの一種/ Credit: ja.wikipedia

クサウオは世界中の海に分布し、浅い潮だまりから水深8000メートルを超える海溝まで、多様な環境に適応している魚です。

体はゼリー状でうろこを持たず、腹部には吸盤を持つ種類も多く知られています。

岩に張り付き、あるいは深海のカニや大型動物に“便乗”して移動することもあります。

そのユニークな特徴から、英語では「snailfish(カタツムリのような魚、クサウオ)」と呼ばれています。

これまでに400種以上が記載されてきましたが、水深3000〜5000メートルに広がる深海域では、クサウオの記録は驚くほど少なく、大きな“空白地帯”になっていました。

研究者の間では「本当にクサウオがいないのか、それとも単に採集が難しいだけなのか」という議論が続いていました。

この疑問に挑んだのが、今回の国際研究チームです。

彼らはカリフォルニア沖で有人潜水艇「アルビン」や遠隔操作探査機「ドック・リケッツ」を用いた調査を行い、深海底のサンプルを採集。

こうして3匹のクサウオが研究室へと持ち帰られ、その詳細な形態とDNA解析が進められました。