この観点からすれば、軍は「戦う」ことに集中し、政治が「何を守るか」という国防の目標を策定するという役割分担は、合理的であると言えるでしょう。

しかし、米軍が本格的に「戦える」軍隊へと変貌するためには、いくつかの障壁を乗り越える必要があります。

まず、米国の軍需産業の製造基盤が衰退している点が挙げられます。現在、他国向けのみならず、自国向けの兵器でさえ、必要なタイミングで十分な量を生産することが困難な状況にあります。この問題は、過去の日米関税交渉の場でも取り上げられていました。

さらに、米軍をどの目的で、どのように運用するのかという優先順位が明確ではありません。トランプ政権は、不法移民や麻薬カルテルから米国本土を守ることを最重要課題と位置づけており、最近ではベネズエラの麻薬組織に対して軍事力を行使する方針を打ち出しています。

しかし、麻薬組織との戦いと、中国やロシアといった軍事大国との戦争では、必要とされる軍事戦略や装備体系が大きく異なります。前者に過度に集中すれば、後者への抑止力が不十分となり、その逆もまた然りです。