この観点からすれば、軍は「戦う」ことに集中し、政治が「何を守るか」という国防の目標を策定するという役割分担は、合理的であると言えるでしょう。
なぜ軍人ではなく、政治家が戦争を指導すべきなのか?
戦争を政治の道具と定式化したクラウゼヴィッツの研究が今でも評価されている理由の一つは、文民統制の根拠となっているためです。彼によれば、戦争指導は政治家の責任であり、軍人の責任ではありません。1/EiB2BKmsNn
— 武内和人/Takeuchi Kazuto (@Kazuto_Takeuchi) May 27, 2022
しかし、米軍が本格的に「戦える」軍隊へと変貌するためには、いくつかの障壁を乗り越える必要があります。
まず、米国の軍需産業の製造基盤が衰退している点が挙げられます。現在、他国向けのみならず、自国向けの兵器でさえ、必要なタイミングで十分な量を生産することが困難な状況にあります。この問題は、過去の日米関税交渉の場でも取り上げられていました。
米国の軍需産業力は衰退、中国は急成長
中国メーカーの多くは軍需産業には分類されないが、戦時には武器製造や支援を目的とする業態にすぐ転換できる。Nom4r5l2c
— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) June 16, 2025
さらに、米軍をどの目的で、どのように運用するのかという優先順位が明確ではありません。トランプ政権は、不法移民や麻薬カルテルから米国本土を守ることを最重要課題と位置づけており、最近ではベネズエラの麻薬組織に対して軍事力を行使する方針を打ち出しています。
しかし、麻薬組織との戦いと、中国やロシアといった軍事大国との戦争では、必要とされる軍事戦略や装備体系が大きく異なります。前者に過度に集中すれば、後者への抑止力が不十分となり、その逆もまた然りです。