8月27日のNature誌に「Maternal stress triggers early-life eczema through fetal mast cell programming」というタイトルの論文が掲載されている。

乳幼児の湿疹(アトピー性皮膚炎)は、乳児期に発症することが多く、多くの場合、生後1年以内に診断される。この要因として、アレルギーの家族歴(遺伝的要因)と免疫を活性化する刺激物に晒されるといった環境要因が組み合わさって起こると考えられている。

この論文では、幼少期の湿疹が胎内で始まり、それが妊娠中の母体ストレスによって引き起こされる可能性が示された。マウスモデルでは、妊娠ストレスが母体のグルココルチコイド(副腎皮質ホルモン・ステロイドホルモンなど)を上昇させ、胎児の肥満細胞(皮膚や粘膜に存在する免疫細胞)を活発にするようだ。それによってかゆみを感ずる神経細胞が変化し、皮膚に対する物理的な刺激への反応を強めるようだ。肥満細胞を作らないマウスでは湿疹ができなかった。

ヒトのデータでも、妊娠初期の母体コルチゾール高値がアトピーの発症リスクを高めることが報告されている。「妊娠中のストレス―肥満細胞・神経細胞の活性化」経路が幼少期湿疹に深くかかわる。母体のストレスが胎児の免疫系や神経系の発達を変化させることは興味深い。母体のストレスがいろいろな病気に関係するだろう。

話は変わるが、米ホワイトハウスは疾病対策センター(CDC)のモナレズ所長を解任したようだ。7月31日に就任して1カ月足らずで解任したとは驚きだ。ケネディ厚生長官は、5月には「妊婦と健康な子どもに対する新型コロナワクチンの接種推奨をとりやめた」し、6月にはCDCの予防接種実施諮問委員会の全委員を解任し、その代わりに反ワクチン活動家を含む新たな委員を任命した。

米国の混乱は日本のチャンスだが、政治の混乱で無策のままだ。与党も野党も、日本の将来に対するビジョンがなさすぎだ。