空飛ぶ観測所が拓いた未来
コンコルドによる74分間のフライトは、単なる記録樹立に留まらなかった。この成功は、超音速機が天体観測のための「空飛ぶ観測所」として非常に有効であることを証明し、太陽コロナ研究に大きな進歩をもたらした。太陽の表面よりもコロナがなぜ遥かに高温なのか、といった長年の謎を解き明かすための貴重なデータが、この飛行によって得られたのである。
コンコルドはその後、商業的な日食観測ツアーにも利用されたが、1973年の偉業に匹敵するものはなかった。そして現在、欧州宇宙機関(ESA)は「Proba-3」ミッションによって、宇宙空間で人工的に日食を再現し、いつでも太陽コロナを観測する技術を確立しようとしている。
技術は進化し、観測手法は変わっても、空を駆け抜け、月の影を74分間も追い続けた科学者たちの情熱と挑戦は、天文学の歴史に燦然と輝く伝説として、これからも語り継がれていくだろう。
参考:IFLScience、ほか
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