【プルゼニ(チェコ西部)時事】パナソニックは29日、電気を使って効率良く熱を作るヒートポンプ式暖房を手掛けるチェコ工場で、大幅に生産能力を拡張した新棟の稼働を本格化させた。欧州で化石燃料を使う暖房から、ヒートポンプ式への切り替えが進む中、生産効率を高めつつ需要の増加に応じる。

 延床面積を3.7倍に拡大し、年間生産台数を従来の15万台から、最大70万台まで順次引き上げる。総工費は約450億円。工場の自動化や、外注部品を減らすことで生産コストを抑える。

 パナソニックの片山栄一副社長は29日の竣工(しゅんこう)式で、「ガスからの移行は今後数年で劇的に進むと確信している」と強調。式典に参加したチェコのフィアラ首相は、「欧州のエネルギーの将来にとって非常に重要だ」と歓迎した。

 欧州では、脱炭素化の機運が高まる中、2022年にウクライナに侵攻したロシアからの天然ガス供給が途絶え、ヒートポンプ暖房の導入が急増した。その後、温暖化対策に対する逆風もあり、需要の伸びは鈍化したが、中長期的な拡大が予想されている。市場をけん引するダイキン工業も昨年末に新設したポーランド工場を本格稼働させるなど、日本や欧州、中韓企業による競争が激化している。(了) (記事提供元=時事通信社) (2025/08/29-19:12)