
移籍市場においてチェルシーといえば、超高額補強の象徴とされてきた。「クラブ史上最高額」「莫大な移籍金でスター獲得」など派手な支出が常に注目されるが、その裏側に目を向けると別の特徴が浮かび上がる。
UKメディア『Sports Mole』の報道によると、チェルシーは今2025年夏の移籍市場で、チームの戦力に定着できなかった選手やエンツォ・マレスカ監督の構想外となった選手を巧みに現金化し、約2億9000万ポンド(約575億6,343万円)を売却で得ている。これによって賃金負担を軽減しながら、新たな投資の余地を生み出す戦略が際立っている。
今夏の売却リストには、ラ・リーガのビジャレアルに移籍したMFレナト・べイガ、プレミアリーグのボーンマスへ移籍したGKジョルジェ・ペトロビッチ、同リーグのバーンリーへ移籍したMFレスリー・ウゴチュクとFWアルマンド・ブロヤといった選手たちが名を連ねた。彼らは目立った貢献を残していないにもかかわらず、数千万ポンド単位の移籍金をもたらした。クラブにとっては大きな収益源となり、財政面のバランスを取る上で重要な役割を果たした。
例外的なケースはアーセナルへ移籍したFWノニ・マドゥエケである。2023年にオランダ1部のPSVアイントホーフェンから約2980万ポンド(約59億円)で加入し、2シーズンにわたってレギュラーとして出場機会を得ていたが、アーセナルが今夏約4760万ポンド(約94億5,309万円)の大型オファーを提示。クラブはこれを受け入れ、約1780万ポンド(約35億3,497万円)の利益を得た。主力級の選手であっても利益を生み出す柔軟な売却戦略を示す形となった。
このようにチェルシーは構想外の選手だけでなく、主力として起用されていた選手の売却からも利益を得ることに成功している。クラブのオーナートッド・ベーリー氏体制の下で示された移籍戦略の多面性は、支出だけでなく収入面でも移籍市場をリードする要因となっているようだ。