夜の森を照らすホタルの光。
夏の風物詩として幻想的な光景を思い浮かべる人も多いでしょう。
ところが最近の研究で、この「ホタルの光」が思わぬ形で利用されていることが明らかになりました。
台湾・東海大学の研究チームは、東アジアの亜熱帯林に生息する「シートウエブスパイダー(学名:Psechrus clavis)」が、ホタルを捕まえた後すぐに捕食せず、光を放ち続ける間は生かしたまま放置しておくことを発見しました。
ホタルの光は本来、仲間を引き寄せるための性的シグナルですが、クモはそれを「光るルアー」として巧みに利用していたのです。
研究の詳細は2025年8月27日付で科学雑誌『Journal of Animal Ecology』に掲載されています。
目次
- ホタルを放置して、さらなる犠牲者を誘う?
- 捕食者と被食者の「信号戦争」
ホタルを放置して、さらなる犠牲者を誘う?
シートウエブスパイダーは、東アジアの亜熱帯林に生息する夜行性の「待ち伏せ型捕食者」です。
彼らは地面近くにシート状の巣を張り、暗闇の中でじっと獲物が引っかかるのを待ちます。
通常、ガなどの昆虫がかかればすぐに捕らえて食べてしまうのが一般的な行動です。
ところが研究者たちが観察したところ、ホタルが巣にかかってもクモはすぐには食べず、最大1時間も放置する様子が確認されました。
しかもその間、クモは時折ホタルの様子を見に行くものの、あえて捕食せずに巣に残していたのです。
実際の画像はこちら。昆虫類が苦手な方は閲覧をお控えください。
なぜクモはホタルだけ特別扱いするのでしょうか。
チームは、ホタルが持続的に発する光(生物発光)に注目しました。
主な獲物となっていたホタル(学名:Diaphanes lampyroides、冬に活動する種)の発光は点滅せず、一定の場所でじんわりと光を放ちます。
この光は、他のホタル、とくにメスを探しているオスにとって「ここにメスがいるよ」という合図になります。