人間は「一卵性の三つ子」を生むことはできるのか
(画像=『ナゾロジー』より引用)

一卵性双生児とはその名前のとおり、1つの受精卵が分裂(多胚化)して2人の胎児が生まれることを指します。

同じDNAによって外見が瓜二つになることで有名です。

では、動物には一卵性双生児が生まれるのでしょうか?また、人間や動物は一卵性の三つ子を生むことができるのでしょうか?

アメリカ・テキサスA&M大学の生殖生理学者チャールズ・ロング氏は、この疑問に答えています。

目次
動物にも一卵性双生児が生まれる
一卵性の三つ子は生まれるのか?

動物にも一卵性双生児が生まれる

人間は大抵、一度に一人の子供を産みます。双子や三つ子などの多胎児出産は珍しいのです。

対して、動物たちは多胎児出産がほとんどです。

2011年の研究によると、平均的な犬は一度に5頭の子犬を出産するとのこと。

しかしロング氏によると、人間の五つ子が稀であることを除けば、それ以外は動物の五つ子と大きな違いはないようです。

もちろん、動物が人間のように双子を生む場合もあります。

人間は「一卵性の三つ子」を生むことはできるのか
(画像=動物は大抵、多胎児出産となる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

さらに一部の動物は毎回双子を出産します。

ただしロング氏によると、これらは通常、一卵性双生児ではなく二卵性双生児とのこと。

羊、ヤギ、鹿などは定期的に二卵性双生児を出産すると言われています。

では、動物たちも人間のように一卵性双生児を出産することがあるのでしょうか?

米国国立医学図書館の報告によると、人間の場合は、1000人に3~4人が一卵性双生児になるとのこと。

動物にも一卵性双生児が生まれます。

実際、2016年にはアイリッシュウルフハウンドの2匹の子犬が遺伝子検査により、すべてのDNAを共有していることが確認されました。

しかし、動物が一卵性双生児を出産する明確な割合は提出されていません。

なぜなら科学者たちは生まれてきた動物が一卵性かどうかわざわざ調べる理由がないのです。

ですから動物の一卵性双生児は珍しいように思えますが、実際にどこまで珍しいものなのか分かっていません。

一卵性の三つ子は生まれるのか?

続いて、もう1つの疑問を考えましょう。

人間や動物は一卵性の三つ子を生むことができるのでしょうか?

人間は一卵性の三つ子を生むことがあります。ただし、受精卵は一度に2つにしか分裂しません。

つまり一卵性の三つ子は、一度目の分裂で2つに分かれ、そのうち片方だけが二度目の分裂で2つに分かれた結果なのです。

同様に一卵性四つ子は、それぞれが二度分裂するケースと、片方だけが三度分裂していくケースがあります。

人間は「一卵性の三つ子」を生むことはできるのか
(画像=アルマジロの四つ子 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

動物の場合も同様のプロセスで一卵性の三つ子が生まれる可能性があります。

ただし、アルマジロだけは特別であり、彼らは必ず一卵性四つ子を出産します。科学者たちは未だになぜアルマジロだけがそのようなルールを持っているのか分かっていません。

ロング氏は、アルマジロの一卵性ルールが近親交配を防ぐのに役立つと主張しています。

DNAが同じ一卵性四つ子は皆同性であり、お互いに交配できません。仲間を見つけるためにどうしても巣穴から外に旅立たなければいけないのです。

さらにこれらの点から、「動物は人間が認識しているよりも高い確率で一卵性双生児を出産している可能性がある」とのこと。

しかし、「今後も科学者たちは動物たちが本当に一卵性かどうか調べることはしないだろう」とも述べています。

仮に生まれた子供たちを比べたとしても、「私たちの目には、大抵どの羊も似ているように思える」とのこと。

確かに人間の場合も、双子や三つ子がどこまで似ているか考えるのは不毛なことなのかもしれません。大切なのは個々の存在なのです。


参考文献

Can animals give birth to identical twins, triplets or even quadruplets?


提供元・ナゾロジー

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