維新が自民党と接近している。「副首都」構想は大阪都構想の焼き直しだが、自民としてはカネのかからない話で維新を連立に取り込み、風前の灯の石破政権を支えようということだろう。
これを国民民主党が激しく攻撃している。今年度の当初予算のように国民民主が減税で粘っても、維新が自民と手を握ると予算が通ってしまうからだ。秋の臨時国会で補正予算を人質にしてガソリン減税を実現しようという国民民主のもくろみがはずれるのだ。
しかしインフレで化石燃料の価格が上がり、世界的にCO₂排出を削減しようとしているとき、ガソリン価格をリッター25円も下げて消費を促進する国民民主の政策は、物価を上げて実質賃金を下げるインフレ税である。
国民民主の支持者がそれを応援しているが、彼らはそれが手取りを減らすインフレ税であることを知らない。ここ1年のインフレで、実質賃金は2.9%も下がったのだ。
国民民主の支持者には「実質賃金」の意味を知らない人もいるが、これは高校で習う話だ。インフレは総需要(AD)が総供給(AS)を上回ったとき起こる。減税で総需要が増えてAD1になると、物価はP1に上がる。賃金をWとすると、実質賃金はW/PからW/P1に下がる。減税で手取りは減るのだ。
もう一つの問題は、財源なき減税で財政赤字が増えることだ。たとえば消費税率を5%ポイント下げると、財源は13兆円失われ、国債を発行しなければならない。今でも長期金利が1.6%を超えて上昇しているのに、それが加速するだろう。
一般会計の利払い費は、今年度予算は10.5兆円だが、2028年には16兆円に増える見通しだ。これに消費減税が加わると利払いはさらに増え、これを払うために国債を発行すると、さらに金利が上がる悪循環になる。
消費税は社会保険料の赤字を埋める一般会計の社会保障財源なので、それを13兆円も減らすと、社会保障支出を大幅に削減しないといけない。まず今年度は7.1兆円にのぼる後期高齢者医療費の後期支援金などの拠出金を減らすべきだ。