カエルの肺に「ノイズキャンセリング機能」が備わっていると判明
(画像=『ナゾロジー』より引用)

カエルの肺には「ノイズキャンセリング機能」が備わっているようです。

アメリカ・聖オラフ大学、ミネソタ大学らの研究チームは、アメリカアマガエル(学名:Hyla cinerea)のメスが、種々雑多な雑音の中で、同種のオスの鳴き声を正確に聞き分けることに関心をもち、調査を開始。

その結果、メスは肺を膨らませることで、オスの鳴き声の周波数に近い雑音を消していると判明したのです。

研究は、3月4日付けで『Current Biology』に掲載されています。

目次
オスの鳴き声に近い音をピンポイントで消していた

オスの鳴き声に近い音をピンポイントで消していた

オスのアメリカアマガエルは、配偶者となるメスに自らの存在を知らせるべく、「メイティング・コール(mating call)」という交尾アピール音を発します。

研究主任のノーマン・リー氏は「彼らのメイティング・コールは、単音の連続であり、犬の吠え声とアヒルの鳴き声を掛け合わせたような音」と評します。

こちらがその様子。

一方で、彼らの周りには、他種のオスガエルがわんさかおり、同じ理由で大声を張り上げています。

しかし不思議なことに、アメリカアマガエルのメスは、その喧騒の中でもしっかりと同種の声を聞き分けているのです。

そこでチームは、アメリカアマガエルのメス21匹を対象に、さまざまな周波数の音を聞かせて、雑音にどう対処しているかを調べました。

実験では、鼓膜(目の後ろに直接付いている)に向けてレーザー音を当て、跳ね返ってきた振動を測定することで、鼓膜表面で生じる振動量を割り出しました。

それと並行して、各振動を与えたときの肺の状態(膨らんでいるか、しぼんでいるか)も調べています。

カエルの肺に「ノイズキャンセリング機能」が備わっていると判明
(画像=肺の膨張時(左列)、収縮時(右列) / Credit: cell、『ナゾロジー』より引用)

その結果、肺が収縮しているときは振動量も多く、雑音がそのまま発生しているのに対し、肺が膨張しているときは鼓膜の振動が抑制され、騒音が消されていたのです。

また、肺の膨張は、雑音の周波数が830〜2730ヘルツになると生じていました。これはオスのアメリカアマガエルのメイティング・コールの周波数に一致します。

つまり、メスは、オスの鳴き声に近い音をピンポイントで消していたのです。

同チームのマーク・ビー氏は「肺の膨張時にのみ見られることから、肺にノイズキャンセリング型ヘッドホンと同じ機能があると見られる」と指摘します。

カエルの肺に「ノイズキャンセリング機能」が備わっていると判明
(画像=ノイズキャンセリングの仕組み / Credit: Time&Space by KDDIより、『ナゾロジー』より引用)

ノイズキャンセリングの仕組みは、消したい音と真反対の周波数(逆位相)をつくることで、音を相殺させるというもの。

簡単に言えば、プラスにマイナスを合わせてゼロにしてしまうのです。

ビー氏は「おそらくカエルも肺を膨張させることで逆位相を生成し、騒音を打ち消しているのでしょう」と述べています。

研究チームは今後、世界に約7200種いる他のカエルにも同じ能力があるのかを調べていく予定です。


参考文献

Some frogs have noise-cancelling lungs to dampen other species’ calls

This frog has lungs that act like noise-canceling headphones, study shows

元論文

Lung Mediated Auditory Contrast Enhancement Improves the Signal-to-Noise Ratio for Communication in Frogs


提供元・ナゾロジー

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