人の「代謝」は、歳を重ねるごとに変化します。

代謝率の低下は、便秘や肥満の原因とされ、いわゆる「中年太り」などもその結果とされてきました。

一方で、代謝率が年齢ごとにどう増減するかは、ほとんど分かっていません。

そんな中、米・デューク大学(Duke University)らが2021年に調査したところ、驚くことに代謝率は20代〜50代で落ちないことが判明しました。

歳をとってウエストが太くなるのは、代謝のせいではないかもしれません。

研究の詳細は2021年8月13日付けで学術誌『Science』に掲載されています。

目次

  • 20代〜50代まで代謝は落ちない
  • 代謝が落ちるのは60代から

20代〜50代まで代謝は落ちない

代謝は大きく「基礎代謝」「新陳代謝」に分けられます。

基礎代謝とは、何もしなくても身体が勝手に消費するエネルギー量(=生きるために必要な最低カロリー量)のことです。

基礎代謝が上がると、体内のエネルギー消費量が増え、それに伴って体が活性化し、体温が上昇します。

メリットは、免疫力が上がったり、太りにくくなることです。

一方の新陳代謝とは、体内の古いものと新しいものが入れ替わる活動を指します。

古い細胞が新しい細胞に入れ替わることで、髪の毛や皮膚が新たに生成されるのです。

肌荒れや冷え性、便秘、肥満の予防につながります。

それでは、これらの代謝率は、年齢とともにどう変動するのでしょうか?

研究チームは、29カ国を対象に、生後8日〜95歳までの人、計6421名の膨大なデータを収集し、分析しました。

各人の1日の総エネルギー消費量を測定するため、チームは「二重標識水(Doubly-Labelled water、DLW)法」を用いています。

DLW法は、「重水素」と「酸素-18」の2種の安定同位体を用いた水を被験者に摂取させ、どれだけ早く尿から排出されるかを調べることで、体が消費する1日のエネルギー量(=代謝率)を測定する方法です。