日本の甲南大学と理化学研究所(RIKEN)、そして早稲田大学(Waseda University)の研究チームが行った最新の研究によって、「よく使う単語ほど意味が多くなる」という言語に関する不思議なルールが、多くの言語に共通している可能性があることが示唆されました。

これまで、この法則を確かめるには、辞書に載っている意味の数を数える方法がよく使われてきました。

しかし、辞書によって載っている語義(言葉の意味の数)が違っていたり、新しい使い方が反映されていなかったりして、正しく数えるのはとても難しいという問題がありました。

そこで今回、研究チームは発想を変えました。

彼らは、AI(人工知能)が文章を分析して作り出す「単語ベクトル(言葉の使われ方を表す数値の集まり)」を使い、単語がどんな場面で使われているか、その文脈の広がりを調べました。

この広がりの大きさを「意味の豊かさ」として数値で評価することで、辞書に頼らずに言葉の意味の多さを測ろうとしたのです。

その結果、英語や日本語をはじめとする多くの言語において、頻繁に使われる単語ほど文脈の広がりが大きくなり、意味が豊かになるという関係が、統計的に確かめられました。

さらに、大きなAI(たくさんの情報を扱えるAI)ほど、この関係がくっきりと現れることも分かりました。

これは、AIが単語の多義性(ひとつの単語が複数の意味を持つこと)をどれだけ正しく見分けられるかを調べる、新しい方法として使えるかもしれないということを意味します。

でもそもそも、なぜ頻繁に使われる単語ほど、たくさんの意味を持つようになったのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年7月27日から8月1日にかけてオーストリアのウィーンで開催されたACL2025で発表され、優秀論文賞に選出されました。

目次

  • 言葉の使われ方にある法則を探る
  • AIが発見した“言葉の法則”とは?
  • 【まとめ】言葉の進化を支える“省エネ構造”

言葉の使われ方にある法則を探る

言葉の使われ方にある法則を探る
言葉の使われ方にある法則を探る / Credit:Canva