一時ほどのブームは去ったようですが、相変わらずFIREに対する憧れを持っている日本人が特に若者に多いようです。FIREとは「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期リタイア)」の略称で、資産形成を早めに達成して仕事をしないで生活するライフスタイルを指します。

mapo/iStock

仕事を早くやめたいという考え方は「労働は美徳」といった伝統的な日本人の価値観とは真逆です。しかし私は決して悪いこととは思いません。満員電車に乗って会社に出かけ、好きでもないメンバーと一緒に嫌な仕事をストレスを溜めてまでやる必要はありません。

しかし、3年前のブログにも書いたように働くことを完全に止めるというFIREはやめた方が良いと思います。

確かにFIREした人たちは時間の自由を手に入れて満足するかもしれませんがその喜びは長くは続きません。好きな本を読んだり、ジムで運動したり、友達とお酒を飲んだり、パートナーと旅行に行ったりするのは楽しくても、いずれ飽きてしまいます。

なぜなら、FIREによる自由は自分の満足感を満たすものの、社会との接点はなくなり周囲からのリスペクトもありません。人間とは承認欲求によってより高い満足感を得ることができるのです。

ロビンソンクルーソーのように無人島で1人で生きていけるような特殊なメンタルがある人以外はいずれ行き詰まります。

FIREをおススメしない理由はそれだけではありません。FIREは経済的に極めてリスクの高い選択肢です。例えば当てにしていた資産や収入が想定外に減少すればリカバリーする方法はありません。

例えばインフレが進めばインフレ率以上に運用していかなければ資産が目減りしていくことになります。あるいは、保有する不動産の空室率が高まって賃料が減少したり、修繕費用が想定以上にかかるといった展開もあり得ます。

FIREしてから経済的に困窮して仕事に戻ろうと思っても労働環境は変化しており、自分が望むような仕事ができる可能性はありません。