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健康ブームの中で「体に良い」とされる食品やサプリメントを過剰に摂取し、かえって健康を損なうケースが後を絶たない。48歳の女性が経験した6年間にわたる極端な健康法の実践は、私たちに重要な警鐘を鳴らしている。

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見過ごされた身体からのSOS

この女性は、当時流行していたファスティングとオメガ3脂肪酸の摂取に傾倒し、毎朝人参ジュースに亜麻仁油を加えたものを朝食代わりにしていた。さらに青魚由来のオメガ3サプリメントを1日3回摂取し、昼食は生野菜中心、夕食は糖質完全カットという極端な食生活を続けた。肉類はほとんど摂らず、調理には太白ごま油のみを使用するという徹底ぶりだった。

最初の3年間は「体が軽い」「頭が冴える」といった好調を感じていたが、それは一時的な現象に過ぎなかった。3年を過ぎた頃から、深刻な貧血症状が現れ始めた。ヘモグロビン値は8まで低下し、わずかな距離を歩くだけで息切れするようになった。中性脂肪値の異常な低下、甲状腺腫の発症など、身体は明確な危険信号を発していた。

しかし、健康法への過信から、これらの症状と食生活の関連性を認識できなかった。医師から鉄剤の服用を勧められても、「薬に頼りたくない」という思い込みから治療を拒否。症状は悪化の一途をたどり、常に眩暈に襲われ、極度の冷え性、慢性的な疲労感、思考力の低下、さらには精神的な不調まで引き起こした。

専門家が指摘する問題点

栄養学の専門家によれば、オメガ3脂肪酸自体は必要な栄養素だが、過剰摂取は血液の凝固能力を低下させ、出血リスクを高める可能性がある。また、極端な糖質制限と動物性たんぱく質の不足は、エネルギー代謝の低下、筋肉量の減少、ホルモンバランスの乱れを引き起こす。

特に問題なのは、「体に良い」という情報を鵜呑みにし、バランスを無視した極端な実践に走ることだ。健康法は個人の体質や生活環境によって適不適があり、一つの方法に固執することの危険性を、この事例は如実に示している。