彼らが注目したのは「逆境的社会条件(Aversive Societal Conditions, ASC)」と呼ばれるものです。

具体的には次の4つの指標で構成されています。

1.腐敗(不正が横行しているかどうか)

2.経済的不平等(貧富の差が大きいかどうか)

3.貧困(生活に困窮する人が多いかどうか)

4.暴力(殺人などの暴力事件がどの程度発生しているか)

チームは2000〜2004年の各国・各州のデータからASC指標を作成し、その約20年後に収集された性格調査データと照らし合わせました。

つまり、人格形成期にどのような社会に暮らしていたかが、後の性格傾向に影響しているかどうかを調べたのです。

結果は驚くべきものでした。

腐敗や暴力の多い国や州ほど、住民の平均的な暗黒特性を示すスコアが高かったのです。

効果の大きさ自体はそこまで大きくはないものの、国際的にも米国内でも一貫した傾向が見られました。

たとえば米国では、ネバダ州やルイジアナ州、ニューヨーク州などが高いスコアを示し、バーモント州やユタ州、オレゴン州などは低いスコアを示しました。

これらの違いは、20年前の社会環境─暴力事件の多さや貧困率の高さなど─と対応していました。

研究者たちは、この関連の理由を次のように説明しています。

腐敗や暴力が蔓延する社会では、「他人は信用できない」「ずるをした方が得をする」といった信念が広がりやすくなります。

そして繰り返しそうした環境にさらされることで、自己中心的な行動が「当たり前」だと学習し、それがやがて性格の一部として定着していくというのです。

画像
Credit: canva

今回の研究は、人格形成における「社会の影響力」を改めて浮き彫りにしました。

暗黒パーソナリティは生まれつきだけでなく、社会の不正や不平等の中で強化されていくのです。

つまり、社会環境を改善することは、単に生活を豊かにするだけでなく、将来世代の「性格」そのものをより健全にする可能性を秘めています。