
イギリスのトッテナム・ホットスパー・スタジアムでは長年、韓国代表キャプテンのFWソン・フンミン(ロサンゼルス)に向けたチャントが響き渡ってきた。ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンでは、日本代表のMF三笘薫が観客を魅了し、リバプールは日本代表MF遠藤航を中盤強化に迎え入れた。ウルバーハンプトン・ワンダラーズも2021年からFWファン・ヒチャンの得点力に助けられている。これらは、かつてリスクと見なされていたアジア選手が、英国サッカーで安定した重要戦力へと変化してきた例だ。
近年、プレミアリーグのクラブがアジアの選手獲得を進める背景には、巨大な海外市場でのブランド構築と選手獲得ルールの変化がある。韓国、日本、中国といった国々は世界有数のサッカー市場であり、母国で人気のある選手を獲得すれば、ユニフォーム販売や地域スポンサー契約、放映権収入の拡大が期待できる。ソン加入後、トッテナムはアジアでのファン層を急拡大させ、地域で高い認知度を確立した。
一方で、経済性やスカウティング戦略の観点も重要だ。日本サッカーを専門とするジャーナリストのチアゴ・ボンテンポ氏は、イングランドのクラブがアジア市場を「低リスクで高いリターンが見込める」魅力的な選手供給源と認識していると指摘する。
リーズ・ユナイテッドの日本代表MF田中碧やコべントリー・シティ(イングランド2部)のMF坂元達裕は比較的安価ながら、高額移籍選手以上の活躍を見せている。特に日本は質・量ともに豊富な人材を輩出しており、EFLチャンピオンシップはプレミアリーグ昇格前に選手がイギリスのサッカーに馴染む場として機能している。
ブレグジット後、英国は全ての海外選手に労働許可のポイント制度を適用し、18歳未満の外国人獲得禁止やU-21選手の登録枠制限が導入された。これにより若手欧州選手の獲得が難しくなり、以前から同制度下で取引されていたアジアや南米の選手が相対的に魅力を増している。