巷でよく「モーツァルトの曲を聴くと頭が良くなる」と言われますが、その真偽は定かでありません。
しかし米ダートマス大学(Dartmouth College)による2021年の研究チームで、モーツァルトの曲にてんかん症状を緩和できる楽曲が存在することが明らかになりました。
チームによると、その曲を薬物抵抗性てんかん患者に30秒以上聴かせると、てんかんに関する脳内の電気活動が大幅に減少したとのこと。
一体、何という曲なのでしょうか。
研究の詳細は2021年9月16日付けで学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- てんかんを緩和する「曲」とは?
- 30秒聴くだけで、てんかん症状が和らぐ
てんかんを緩和する「曲」とは?
その曲は、1781年作曲の「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448 (375a)」です。(以下、K.448と表記)
当時25歳だったモーツァルトは、ヨーゼファ・バルバラ・アウエルンハンマーという優れた女性ピアニストの弟子と二人で演奏するためにこの曲を作りました。
記録では、同年11月23日に、彼女の家で開かれたコンサートで初演されています。
モーツァルトは彼女の才能を高く買っていましたが、その一方で、彼に好意を寄せる彼女の厚かましい態度には嫌気が差していたそう。
同年8月22日付けのモーツァルトの手紙には、こう書かれています。
「もし画家が悪魔をありのままに描こうと思ったら、彼女の顔を頼りにするにちがいありません。(中略)彼女は田舎娘のようにデブで、汗っかきで、吐き気を催すほどです」
相当な言いようではありますが、彼女との連弾のために作ったK.448は音楽史に残る名曲で、一度は聴いたことがあるかもしれません。
それがこちら。
これまでの研究でも、K.448を聴くことで、てんかん症状を緩和できることが示唆されていました。
しかし、K.448が与える影響や、その理由までは明らかにされていません。