3. 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』:映画会社を訴えさせたカップル
1995年、サラ・エドモンソン(19歳)とベンジャミン・ダラス(18歳)は、オリバー・ストーン監督の映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に触発され、連続殺傷事件を起こした。映画は、殺人を繰り返すカップルがメディアによって英雄視されていく様を描いている。
二人はLSDの影響下でこの映画を繰り返し鑑賞し、「映画のようなことをしよう」と犯行に及んだ。一人が死亡、一人が半身不随となる悲劇を引き起こし、逮捕された。
この事件が特異なのは、被害者遺族が「映画が殺人を扇動した」として、監督と制作会社のワーナー・ブラザースを訴えたことだ。訴えは棄却されたものの、「表現の自由」と「創作物が与える影響」についての激しい議論を巻き起こした。

4. 『マトリックス』:ここは現実じゃないと信じた息子の凶行
2003年、19歳のジョシュア・クックは、ショットガンで養父母を殺害した。彼の主張は衝撃的だった。「自分は『マトリックス』の世界に生きていると思っていた」というのだ。
彼は映画の主人公ネオのように黒いトレンチコートをまとい、「この世界はシミュレーションだ」と信じ込んでいた。両親を殺害した後も、彼は冷静に警察へ通報。「全ては映画の脚本通りだ」と信じていたという。
後に「マトリックス・ディフェンス」という言葉まで生んだこの事件は、強力な物語が、精神的に不安定な個人をいかに危険な妄想へと導くかを示す、現代的な悲劇と言えるだろう。
関連動画: https://youtu.be/3tTCjq8Ao0s?si=6xFeYsCEjV0BUvkD
5. 『アメリカン・サイコ』:殺人を“作品”として世界に配信した男
2012年、ルカ・マニョッタは、中国人留学生のジュン・リンさんを殺害し、その様子を撮影したビデオを「1 Lunatic 1 Ice Pick(1人の狂人と1本のアイスピック)」と題してネットに投稿した。
この事件は、映画『アメリカン・サイコ』や『氷の微笑』からの露骨な影響が見られた。『アメリカン・サイコ』の主人公のように殺人を記録・演出し、『氷の微笑』で象徴的に使われたアイスピックを凶器に選んだのだ。さらに遺体をバラバラにし、政府機関や学校に送りつけるという猟奇的な行動は世界中を恐怖に陥れた。
彼は殺人を、観客に見せるための「パフォーマンス」だと考えていた。自己顕示欲が最悪の形で発露したこの事件は、インターネット時代の新たな犯罪の形として今も語り継がれている。
彼らは単なる狂人だったのか、それとも社会が生み出した怪物だったのか。フィクションに現実逃避し、その境界線を見失った時、悲劇は生まれる。これらの事件は、創作物が持つ力と、それを受け取る我々の心の脆さの両方を浮き彫りにしているのかもしれない。

参考:Ranker、ほか
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