封印された“死のテープ”――地獄の6分間
襲撃の様子を知る唯一の手がかりは世にも恐ろしい形で残された。パニックのさなか、ティモシーはビデオカメラの録画ボタンを押すことに成功したのだ。しかし、レンズキャップはついたままだった。映像は何も映っていない。ただ、生々しく、恐怖に満ちた6分間の音声だけが記録されていた。
録音は、テントの中にいたエイミーが「まだ外にいるの?」と尋ねる声で始まる。その直後、ティモシーの絶望的な叫び声が響き渡る。「外に出ろ!ここで殺される!」。ジッパーが素早く開けられる音は、エイミーが彼を助けに駆け出したことを示している。彼女がティモシーに「死んだフリをして!」と叫ぶ声も聞こえる。
それに続くのは、叫び声、うなり声、そして格闘の音が入り乱れる、混沌とした苦痛に満ちた時間だ。ティモシーがエイミーに「クマを殴れ!」と叫ぶと、彼女はフライパンでクマを叩きながら「反撃して!」と彼を励ます。悲鳴はますます激しくなり、そして、テープは唐突に終わる。
10月6日、二人を迎えに来たパイロットのウィリー・フルトンが現場で見たものは、悪夢のような光景だった。そこに二人の姿はなく、代わりに極めて攻撃的な様子のクマが、フルトン曰く「人間の遺体の山」の上に鎮座していたという。

愛か、狂気か。男が遺した究極の問い
この「死のテープ」の存在は、激しい議論と、沈黙の誓いを生んだ。調査関係者以外でこの録音を完全に聞いた唯一の人物は、著名な映画監督ヴェルナー・ヘルツォークだ。彼はトレッドウェルの生涯と死を描いたドキュメンタリー映画『グリズリーマン』(2005年)を制作していた。
テープの所有者であり、映画の製作総指揮も務めたトレッドウェルの元恋人、ジュエル・パロヴァクは、この音声を映画で使用することを断固として拒否した。しかし、監督であるヘルツォークが事件を深く理解するために不可欠だと考え、一度だけ聞くことを許可した。
6分間の地獄を聞き終えたヘルツォークは、顔面蒼白で彼女にこう告げたという。「決してこのテープを公にしてはならない。破壊すべきだ」。パロヴァクはテープを破壊しなかったが、固く金庫に封印した。以来、このテープが公にされることは二度とない。
ティモシー・トレッドウェルの物語は、野生動物への深く型破りな愛の物語であると同時に、危険な擬人化と、人間と野生の捕食者の間にある越えてはならない境界線を無視した、悲しい教訓でもある。
封印されたテープの謎は、この物語の衝撃をさらに増幅させ、アラスカの広大な荒野に、今も不気味な囁きのように響き渡っている。

参考:Misterios do Mundo、ほか
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