
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))
生成AI、特にChatGPTのようなチャットボットは、私たちの生活に革命をもたらした。しかし、その“もっともらしい回答”を鵜呑みにした結果、一人の男性が命を落としかけるという衝撃的な事件が発生した。これは、AIが生成する医療情報の危険性を浮き彫りにする、現代の教訓的な物語である。
「塩の代わり」を求めて…AIが提案した“毒物”
事件の被害者となったのは60歳の男性。彼は健康のために食卓塩(塩化ナトリウム)を完全に断ちたいと考え、単に塩分を減らすのではなく、「完全な代替品」を探し始めた。そして、彼が助けを求めたのが、AIチャットボットだった。
AIが提案した“代替品”は、「臭化ナトリウム」。これは、かつて鎮静剤や一部の工業製品に使用されていた化合物であり、決して食用ではない。しかし、男性はAIのアドバイスを信じ込み、3ヶ月間、毎回の食事で食卓塩の代わりにこの化学物質を使い続けた。
妄想、幻覚…心身を蝕む謎の症状
その結果、彼の心身には恐ろしい異変が現れ始めた。妄想、幻聴、幻覚に襲われ、「隣人が自分に毒を盛っている」と信じ込むようになった。水道水を避け、自分で水を蒸留するほどの極度のパラノイアに陥った。さらに、激しい喉の渇き、疲労感、不眠、運動失調、そして顔のにきびや発疹といった、全身にわたる症状が現れた。
最終的に病院に運ばれた彼は、診察中に逃げ出そうとしたため、安全のために精神科に強制入院させられる事態となった。
診断の結果、医師たちは彼が「臭素中毒(ブロミズム)」に陥っていることを突き止めた。これは、体内の臭化物濃度が異常に高まることで引き起こされる中毒症状で、神経系、精神、皮膚に深刻な影響を与える。かつては臭化物を含む薬が不安や不眠の治療に処方されていたため珍しくなかったが、現代では非常に稀な中毒症だ。