
大会やスポーツイベントは人の力なくして成立しない。規模が大きくなればなるほど必要な人員も増える。2010年のバンクーバー冬季五輪では、2週間で2万5,000人のボランティアが動員された実例がある。
カナダのメディア『Vancouver Sun』は、国際サッカー連盟(FIFA)が2026年にカナダで開催されるFIFAワールドカップ(W杯)の13試合に向け6,000人のボランティアを募集しながら、報酬を支払わないことに疑問を呈する記事を掲載した。
FIFAは非営利組織として男子・女子W杯などの収益を世界中のサッカー発展に充てていると説明しているが、幹部には高額報酬を受け取る者も少なくない。長年の功績で地位を得た者もいれば、政治的なつながりで就任した者もいる。過去には大規模な汚職事件で幹部の逮捕や有罪判決、失脚が相次いだ。FIFAの公開財務報告によれば、2022年カタールW杯後のFIFAの資産は約40億米ドル(約5,910億円)に達し、2024年末時点でも約30億米ドル(約4,430億円)を保有している。
同記事は、これだけの資金がありながら、なぜボランティアに対して報酬を払わないのかと指摘する。選挙運営ではスタッフに報酬を支払うことが公共予算として計上され、自由で公正な選挙という社会的事業を支えている。FIFAが大会運営や雑務、飲み物の提供、入退場のサポートを行う人々に報酬を支払っても、財政的に問題はないはずだと論じている。
さらに、同記事の筆者は、2010年冬季五輪でサイプレスのモーグル/エアリアル施設づくりに従事したボランティア経験を引き合いに、その仕事に対して報酬があれば、喜んで受け取っただろうと意見も。その経験から、大会に参加し歴史の最前列に立てたとしても、ボランティアの本質は労働であり、イベントはその労働によって成り立つと強調。
ボランティアは時間を差し出し、ときに金銭的負担まで背負って大会を支えており、実質的には時間でFIFAに支払っている構図だとする。本来はその逆であるべきだ、と結んでいる。
なお、ボランティアの募集は既に開始され、今2025年秋に初回選考、来2026年春に研修が予定されている。大会期間中は8回の勤務シフトが求められ、FIFAは制服や食事、大会公式グッズの割引を提供するとしている。