これらを備えた個人が増えれば、企業も人を一方的に利用できず、対等なパートナーとして尊重せざるを得ない。その結果、多様な働き方とイノベーションの循環が社会を活性化させる。
さいごに
日本には「困ったときは助け合う」という互助の精神が深く根付いており、とりわけ災害時には強力なセーフティーネットとして機能してきた。しかし公助や相互扶助が強調され過ぎると、自助努力を怠るフリーライダー問題が生まれ、責任の所在が曖昧になる。最終的な責任主体は唯一無二である個人と家族であり、社会的支援はあくまで補完的に位置づけるのが健全である。
もっとも、職種・産業・地域によって労働市場の流動性に差があることは事実である。それでも、組織と個人の関係を固定的な上下から柔軟な契約へと再編し、代替可能性を前提に互恵性を追求する姿勢は、多くの分野で現状を打破する契機となり得る。
強い個人が増え、Win–Winの関係が広がることで、多様な働き方とイノベーションの循環が社会を活性化させるだろう。