環境省は、藻場や干潟の保全など、沿岸海域の生物多様性を高める「里海」づくりに関する手引を改定する。手引は、里海づくりを進める自治体や漁業関係者、NPOなど向けのもので、現行版は2011年に策定された。改定では、各地の参考となるような事例を盛り込む。海の環境に悪影響を及ぼす気候変動を踏まえた活動内容も紹介し、地域の取り組みを支援する。25年度内に公表する予定だ。

 環境省の調査によると、里海づくりの活動は10年度調査で122件だったが、22年度調査は343件へ拡大。そんな中、気候変動による海水温の上昇で藻場が枯れる「磯焼け」が各地で進むなど、海洋環境は急激に悪化している。保全活動の担い手や資金の不足も課題となっており、環境省は対策を充実させる必要があるとみている。

 現行の手引は、里海づくりの考え方といった基本的な事項の説明が中心となっている。新たな手引では、地域の特性に応じた国内外の取り組み事例を紹介。これから活動を進める地域にとって、生態系保全の目標設定や対策の検討に役立つよう、実践的な内容とする。気候変動による海洋環境の変化を踏まえた活動の考え方も整理する。

 里海を巡っては、環境省の有識者検討会が今年3月、脱炭素や観光振興といった複数の施策を組み合わせて進めることで地方創生につなげる「令和の里海づくり」を戦略的に推進すべきだと提言した。 (了) (記事提供元=時事通信社) (2025/08/04-15:43)