小惑星の中央をくり抜き回転させ、その中に人間を住まわせるというのです。
突飛なアイデアに思えますが、実はこれ、1976年にアメリカの物理学者ジェラード・オニール氏が提案したスペースコロニー「オニール・シリンダー」に触発されたものとなっています。

オニール・シリンダーは、2つの巨大なシリンダーで構成されており、回転することで遠心力を利用して内部の居住区に人工重力を与えるというもの。
日本人にとってはガンダムに登場するスペースコロニーと表現した方がわかりやすかもしれません。
しかし、それら巨大シリンダーの材料すべてを地球から宇宙へと運んでくるのは現実的ではありません。
そこでミクラブシック氏らは、「既に宇宙空間に存在している小惑星を土台として使ってしまおう」と考えました。
「小惑星をくり抜いてメッシュで覆う」というSFチックなアイデア
では、小惑星を使って人工重力を生み出すことなど可能なのでしょうか?
この点も、2019年に発表されたオーストラリア・ウィーン大学(University of Vienna)の研究結果に基づいています。

その論文では、「中央に円筒形の空洞をもつ小惑星を回転させることで、地球と同様の人工重力を生み出せる」ことが示唆されています。
とはいえ、ほとんどの小惑星は「固い岩の塊」というよりも、岩や石、砂の塊が弱い重力によって集まった「瓦礫の山」です。
そのためくり抜かれた小惑星は強度を保てず、回転するときに割れたり壊れたりするはずです。