「AIに魂は宿らない」脚本家としての信念
キャメロン監督のAIに対する懸念は、今に始まったことではない。2023年のインタビューでは、AIが人間の脚本家に取って代わるという考えを一蹴している。
「肉体を持たない知性が、他人が経験した人生、愛、嘘、恐怖、死についての言葉をただオウム返しに組み合わせ、言葉のサラダにして吐き出すだけ。そんなものに観客の心を動かす魂が宿るとは到底思えない。人の心を動かす物語は、人間にしか書けない」と、彼はその信念を語る。
コスト削減の“道具”としてのAI利用
しかし、そんな彼もAIの利用を完全に否定しているわけではない。特に、高騰し続ける映画製作のコストを削減する手段として、AIに一定の期待を寄せている。昨年9月には、画像生成ツール「Stable Diffusion」で知られるStability AI社の取締役に就任した。
彼は、AIが人間の仕事を奪うのではなく、制作のスピードを倍増させるためのツールになり得ると考えている。「『DUNE/デューン』のようなCGを多用する大作を作り続けたいのなら、製作費を半分にする方法を見つけなければならない。それは、スタッフを半分解雇するということではない。アーティストが一つのショットを仕上げるスピードを倍にすることで、全体の制作サイクルを速め、もっと多くのクールな仕事に取り組めるようにする。それが私のビジョンだ」と、彼は語る。
創造の魂は人間にしか宿らないと信じつつも、その創造を助ける“道具”としてAIの可能性を模索する。AIの脅威を誰よりもリアルに描いてきた巨匠の言葉は、テクノロジーとどう向き合うべきか、という根源的な問いを私たちに突きつけているのかもしれない。
参考:Daily Star、ほか
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