宇宙版バミューダトライアングルが拡大…「人工衛星は狂い、宇宙飛行士は“幻”を見る」地球の磁場に今、何が起きているのかの画像1
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

 船や飛行機が忽然と姿を消すという伝説で知られる「バミューダトライアングル」。だが、その宇宙版とも呼べる謎の領域が、大西洋のはるか上空に存在することをご存知だろうか。人工衛星は誤作動を起こし、宇宙飛行士は不可解な現象を報告する――。「南大西洋異常帯(SAA)」として知られるこの宇宙の“危険地帯”が、近年、不気味な拡大と分裂を続けていることが明らかになり、科学者たちを悩ませている。

人工衛星が狂い、宇宙飛行士は“幻の光”を見る

 南大西洋異常帯(SAA)とは、地球をドーナツ状に取り巻く「ヴァン・アレン帯」という放射線帯が、南米大陸から南大西洋にかけての地域で、異常に地表近くまで垂れ下がっている領域のことだ。この場所では地球の磁場が極端に弱まっており、宇宙からの強力な放射線が容赦なく降り注ぐ。

 この領域を通過する人工衛星は、高エネルギー粒子によって電子機器がダメージを受け、データの破損や電源喪失といった原因不明の技術的トラブルを頻繁に起こす。国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士たちは、この領域を通過する際に、網膜を突き抜ける高エネルギー粒子のせいで、実際にはないはずの「幻の閃光」を目撃すると報告している。

拡大し、分裂する謎の領域

 この異常な領域は、何十年も前から科学者たちの頭を悩ませてきたが、近年の観測で、さらに厄介な変化が起きていることが判明した。2020年、NASAの研究者たちは、この異常帯が単に拡大しているだけでなく、2つの明確な塊に「分裂」し始めていることを発見したのだ。

 これは、地球の磁場そのものが大きく変動しているサインか、あるいは、いつか起こるとされる地磁気の逆転(ポールシフト)の前触れかもしれない。もしこのまま異常帯が拡大を続ければ、ナビゲーション、気象観測、通信といった私たちの生活に不可欠な人工衛星が、より頻繁に機能不全に陥る可能性がある。