雇用を作ること自体が大きな社会貢献で立派である。だが、すべての産業の起業家がそれをするのは現実的ではない。労働人口減少や雇用の流動性低下に直面すれば、たちまち赤信号が点灯するためだ。
去るコロナ禍において、米国では航空業界の業績悪化で迅速なレイオフを行った。一方で日本企業では解雇回避努力をした。航空現場のスタッフは別の部署へ配置転換で大量解雇をせず、危機を乗り切った温情雇用事例が海外で美談として大きく取りあげられた。
しかし、今後も非常に厳しい国際競争に勝ち続けるためには、余裕もなくなってきたのだ。「雇用しない一人起業」という選択肢は拡大しつつあるだろう。
AI時代にどう振る舞うべきか?
これからのAI時代、経営者と会社員とでは取るべき戦略が異なると考える。
たとえばAI・自動化の導入で省人化を進め、フリーランスや業務委託を活用して固定費を削減。ビジネスも省人化を意識した業務設計にするべきだろう。
一方で会社員が取るべき戦略は次のようなものだ。まず、勤務先以外に自分の事業を持ちつつ、本業では雇用流動化に対応できるだけの有力なスキル、経験を持つことだ。
もはや「雇われること」は選択肢の一つに過ぎない時代になりつつある。
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今後は経営者も従業員も、それぞれの立場で変化への対応力が問われる時代になる。重要なのは、「誰が悪いか」ではなく、「どう変化に備えるか」である。企業は従業員に依存しすぎず、自律的な事業モデルへの移行を進めるべきであり、従業員もまた、企業に頼らずとも生き抜く力を磨くことが求められている。
要は棲み分けであり、会社が雇用を作ればそうした人が良い人生を送る場の提供となる。
重要なのは両者の対立を煽るのではなく、変化する時代にどう対応するかを建設的に考えることだろう。
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