また、ユタ州のNicole Howardさんは母乳の販売により、10か月で約1万ドル(約147万円)を売り上げました。

大量購入者には値下げするなど、顧客層に応じて価格を細かく設定しているようです。

彼女は「赤ちゃんを助けながら、自分の生活も支えられる」と語っています。

とはいえ買い手の多くは、トレーニング前後の栄養ドリンクを欲する「真剣なボディビルダー」とされています。

もちろん販売者の中には「不審者」との取引を避けるため、購入者を慎重に選別する人もいます。

そして、こうした取引はオンラインの口コミや一部メディアの報道によってさらに広まり、需要は今も続いています。

では、大人が母乳を飲むことには本当にメリットがあるのでしょうか。

母乳は成人にとってスーパーフードなのか?

母乳には、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン・ミネラル、そして乳児の免疫を守る抗体など、多くの有用成分が含まれます。

しかし、それらは主に赤ちゃんの未熟な消化・免疫システムを支えるためのもので、成人が摂取しても同じ効果を得られるわけではありません。

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「母乳が大人にとってスーパーフードである」という科学的根拠はない / Credit:Canva

ロンドン大学クイーン・メアリー(QMUL)の研究者は、「成人による母乳の直接摂取が医療的効果をもたらすという科学的証拠は存在しない」と明言しています。

抗体や成長因子は成人の消化器でほぼ分解されるため、体内でそのまま働くことはほとんどありません。

見られる効果は、ほとんどがプラセボ(思い込み)の範囲だといいます。

さらに、個人間での母乳取引には重大なリスクもあります。

搾乳・保存・輸送の過程で細菌やウイルスが混入する可能性があり、HIVや肝炎ウイルス、大腸菌などの感染リスクが指摘されています。

また、オンライン取引では牛乳や水を混ぜた偽装品も報告されており、購入者が品質を保証する手段はほとんどありません。