カジュアル衣料ブランド「グローバルワーク」は7月、タイ・バンコクに1号店をオープンし、東南アジア市場に参入した。海外売り上げを2030年までに現在の約4倍の100億円とする目標の実現につなげる。運営を手掛けるアダストリア(東京都渋谷区)の太田訓グローバルワーク営業本部長は8月上旬の時事通信のインタビューで、タイ現地のビジネス環境について「特別なやりづらさは感じない」と好感。進出の背景や今後の展望を語った。発言要旨は以下の通り。

◇日本語人材採用

 ―東南アジアの中でもタイを進出先に選んだ理由は。  可処分所得の高い中間層の拡大や若年層を中心としたファッションに対する支出意欲の高さ、保守的な国も多い東南アジアの中でも多様なスタイルを受け入れる土壌があることなどを考慮した。23年に現地に出店したアダストリアの別ブランド「ニコアンド」を通じて顧客ニーズの理解が進み、現地デベロッパーとのつながりができていたことも後押しとなった。

―かねて台湾や香港に進出済みだが、言語、法律・規制の運用、人材といった面でタイのビジネスのしやすさは。

 現地法人や店舗の主要スタッフに日本語が話せる人材を採用したため、あまりやりづらいとは感じていない。どの国・地域にも文化の違いはあり、タイだけ特別に気になる点はない。法律や規制のやりづらさも当社ではそれほど感じなかった。

 店舗にはアパレル業界の経験者を数人配置したため、スタッフとのコミュニケーションで大きく困ることもなかった。ただ、ブランドのコンセプトや大切にしている価値を伝えるといったやりとりは当然必要となった。

―日本市場の先行きをどうみるか。

 物価高の影響で、アパレル購入の見極め・厳選が進むとみている。人口減少で販売員確保にも影響が出るだろう。市場自体が縮小する中、シェア獲得が重要になると考えている。

 ―活況のインバウンド(訪日客)市場に対する受け止めは。

 ニーズが高まっておりチャンスと捉えている。ニコアンドの事例では都内の旗艦店を目にした訪日客が帰国後に現地店舗を訪れたり、商業施設のデベロッパーが出店を打診したりする相乗効果が出ている。

◇気候や文化に対応

―タイ出店後の現地の客の反応は。

 品質の良さに加え、仕事でも休日でも着られる点が好評だ。こうしたオン・オフ両方に対応したブランドが現地に不足していることは事前の聞き取り調査で把握していた。

―商品ラインアップは日本の店舗とどう違うか。

 各地の気候や文化に対応する必要があると考えている。タイと日本の気候差が大きくなる10月以降への準備を進めており、ニコアンドの経験から、現地で不要な冬物の除外や不要と思われたが実はニーズのある商品の確保に取り組む。

 海外事業の戦略立案を担う多国籍人材のチームを本社に設置し、現地ニーズの把握や文化の違いを見極めた商品開発も実施している。市場規模やわれわれの強みが生かせるかどうかを考慮して商品化するかどうかを決める。

―今後の進出計画は。

 直近では7月末にフランチャイズ形式でマレーシアに出店した。市場理解を進め、将来的な直営店出店を検討する。ニコアンドが進出済みのフィリピンも視野にあるほか、巨大市場である中国も見据えている。(時事) (記事提供元=時事通信社) (2025/08/07-15:00)