システムを開発・導入して工事計画を精緻化し動員数を削減

 工期を短縮化できた要因の一つが、同社が日立ソリューションズと共同開発した、定期修理を効率化するためのシステムの導入だった。

「ピーク時の工事物量を精査したり、一人ひとりの作業員の効率を上げることによって、同じ工事をやるにも少ない人数で仕上げましょうという工事計画精緻化の取り組みを行ってきたことで、動員する作業員の延べ人数を、前回の2020年の定期修理と比較して10%以上削減することができました。弊社は茨城・鹿島のほかに、岡山の水島コンビナートにも大型プラントを持っており、岡山で植えた種を茨城で大きくして、それをまた岡山に返すというサイクル(あるいは逆のサイクル)が、お互いの情報交換のなかで生まれてきました。さらに全社の若手スタッフを集めて、他の事業所とも共有しながら施策を検討し、全社施策として展開することで、25年度から同じ仕組み・システムを用いて各事業所工場の定期修理を回すという段階に入ってきています。

 工事進捗を可視化することで、作業員の待ち時間を少なくし、現場作業に注力できる時間を長くする工夫を行ったりしています。例えば、従来は日々の工事は弊社の運転管理部門及び設備管理部門の担当者が現場の安全措置状況と前日の工事日報の内容を照合して、紙に印刷された着工許可証にハンコを押すことで協力会社作業員の工事着工を許可していました。定期修理時はプラントによっては数百件の工事着工を一つひとつ確認するため、着工までに朝1時間の待ち時間が発生することも珍しくありませんでした。この着工許可証にRIFDを貼り付け、安全確認に必要な情報を連携させ、多数の工事の着工可否を瞬時に仕分けできる受付システムを構築したことで朝の着工待ち時間が大幅に削減されました。

 もっとも動員数の減少につながったのが、日立ソリューションズと共同で開発した工程管理ツールの導入です。計画段階で安全措置にかかる期間、複数の協力会社に実施いただく各種工事の期間を可視化し、精緻に見直すことが工程短縮に大きく寄与しました。このツールは工事実行段階での効率化にも役立ちました。従来は協力会社の方々が作成した当日の工事進捗と翌日の予定工事が記載された工事日報を使用して、毎日夕刻に運転管理部門及び設備管理部門の担当者と協力会社の3者で調整会議を実施していました。工事の作業単位での進捗をシステムに入力、管理することで、工事日報の作成、詳細な調整会議を実施しなくても工事進捗をリアルタイムで把握することが可能となりました。その情報は協力会社間でも共有され、作業終了が次工程を担当する協力会社の担当者へメール送信されることで無駄なアイドルタイムが削減され作業員の稼働率の向上につながりました。

 このほか、作業員の方々のヘルメットにビーコンデバイスをつけて、プラントの入り口に受信機を設置し、どの作業員が今、どこでどういった作業に従事しているのか、もしくは事務所に戻って待機しているのかを把握できるようにもしました。

 こうした取り組みによって、無駄な時間を大幅に削減することで、弊社も協力会社様も助かっています。もちろん工期の圧縮やコスト削減といった効果もありますが、何よりも定期修理は人集めに本当に苦労しますし、『もうこのままだと、定期修理ができなくなってしまう』という危機感を抱いていたので、少ない人数で定期修理をできるような素地ができつつあるという点が大きいです」