
大田区役所 Wikipediaより
東京都で行われた7月の参議院選挙において、信じがたい事態が発覚しました。不在者投票の数が二重計上されていたにもかかわらず、最終的な帳尻を合わせるために、現場の選挙管理担当者が「無効票を水増しする」という形でごまかしていたというのです。
ミス自体も、もちろん看過できるものではありません。しかし、それ以上に深刻なのは、「つじつまを合わせるために虚偽の数字をつくった」という組織的隠蔽の構造です。
選挙は民主主義の根幹であり、有権者の一票一票には、社会を変える力があります。その票が集計され、結果として発表される過程に一点の曇りもあってはならない——。それが近代民主主義国家の大前提であるはずです。
ミスが発覚した段階で、正直に申告し、票の再確認を行っていれば「不注意だったが誠実に対応した」と評価されたかもしれません。ところが、大田区選管の対応はその真逆でした。
誤りをごまかすために、約2,600票もの「存在しない無効票」をでっち上げた。しかも、再点検は「選挙結果に影響がない」として行わない方針。これでは、結果に影響があったかどうか以前に、選挙制度そのものへの信頼が大きく揺らぎます。
かつて2013年の高松市、2014年の仙台市、2017年の滋賀県甲賀市でも、同様の「無効票水増し問題」が発覚しました。それでもなお、同じ過ちが繰り返されているということに、私たちは危機感を抱かなければなりません。
行政の不正を「結果オーライ」で済ませてはならない。たとえ結果に影響がなかったとしても、不正があった事実自体が重大であり、徹底的な調査と再発防止策、そして関係者の説明責任が求められます。
民主主義の信頼を蝕むのは、こうした「バレなければいい」という感覚の蓄積です。一票の価値を軽んじる姿勢に対しては、政治の現場にいる人間として断固として声を上げていきたいと思います。