二次相続で多額の相続税

 路線価の上昇は、人々に大きな影響を与え始めているという。

「路線価は相続財産を評価する際の基礎となる数字ですので、それが全国的に上昇しているというのは、これから相続を迎える高齢者のいる世帯にとっては深刻な問題です。年間で亡くなる方の数は160万人くらいですが、その構造が変わりつつありまして、配偶者を亡くされた高齢のおひとり様が増加しています。ご夫婦のうちどちらかが亡くなった際の相続は一次相続といわれ、相続税上、配偶者特別控除があるので、多くの場合は税金を負担せずに済みますが、二次相続になると、こういった控除はなくなります。例えば大都市圏の比較的中心部に住まわれている方になりますと、かなりの割合で相続税が課税されることになりますが、路線価が上がっていくと、ご遺族が二次相続で多額の相続税を課せられることになります。

 団塊の世代が後期高齢者となり、おそらく向こう5~10年くらいの間で、実際に相続が発生するケースが増えてくると予想されますので、路線価が毎年上がり続けることで、二次相続によって物件を売却するという動きも増えてくると思われます。当面は、少なくとも大都市圏は不動産価格が大きく落ち込む可能性は低いと考えられますので、ここまで大きく路線価が上昇するというのは、多くの人々、特にこれから相続を迎える方々にとっては、決して朗報とはいえない、むしろ深刻な事態だといえるかもしれません」(牧野氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)