こうした過剰な刺激に長期間さらされることで、感情の起伏が乏しくなる「感情の平坦化」が起こりやすくなります。

Z世代の無表情は、情報過多による感情の疲弊が生んだ適応的な反応とも言えるでしょう。

4. 美的価値観の変化

画像
美意識の変化。ありのままの自分を受け入れる姿勢 / Credit:Canva

従来のSNSでは、明るく整った顔立ち、加工フィルターによる美しさが“良い写真”とされてきました。

しかしZ世代は、そうした「完璧な美」ではなく、「素のままの自分」に価値を見出しています。

過剰なまでの過剰なまでの華やかさを拒絶して、生々しさ、曖昧さ、ぎこちなささえも受け入れているのです。

Z世代にとっての無表情とは、単に無関心を装っているのではなく、「飾らない強さ」の象徴なのです。

ここまでで心理学者ウェル博士が分析する「Z世代の無表情」の理由を考えました。

彼らの「無感情な視線」は、感情の制御、文化的選択、デジタル疲労への適応、そして美意識の変革という、複合的な背景をもつ非言語的な表現です。

それは、上の世代の常識では測れない、新しい自己表現のかたちなのかもしれません。

Z世代の視線は、静かだけれども強く、「常に露出が求められる時代」を映し出すメッセージなのです。

全ての画像を見る

参考文献

The Psychology Behind the Gen Z Stare
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-clarity/202507/the-psychology-behind-the-gen-z-stare

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部