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前回紹介したように、米国エネルギー長官クリストファー・ライトの指示によって、気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた報告書が2025年7月23日に発表された。タイトルは「温室効果ガス排出が米国気候に与える影響に関する批判的レビュー(A Critical Review of Impacts of Greenhouse Gas Emissions on the U.S. Climate)」
何回かにわたってその内容を説明してゆくが、今回は、ライトエネルギー長官と著者5名による序文を全訳して紹介しよう。この報告書の狙いや位置づけがよく分かる。徹底して政治的影響を排除し、科学的手法を貫くことが宣言されている。なお以下の文中でカッコ内は筆者による追記である。
長官による序文
エネルギー、厳格性(integrity)、そして人類の潜在能力の力
私はこれまで、原子力、地熱、天然ガスなど、さまざまな分野におけるエネルギー起業家として働くという特権に恵まれてきました。現在は、ドナルド・トランプ大統領の下でエネルギー長官を務めています。しかし何よりも私は、現代のエネルギーこそはまさに奇跡だと考える物理科学者です。エネルギーは、現代生活のあらゆる側面を支え、あらゆる産業を動かし、アメリカを世界の発展を牽引するエネルギー大国に成長させました。
過去2世紀にわたる人類の繁栄は、称賛に値する物語です。しかし、この進歩を可能にしたエネルギーシステムこそが、今や人類の存続を脅かす脅威となっていると、私たちは執拗に指摘されています。炭化水素ベースの燃料は、地球の破滅を招く危険性があるため、早急に廃止すべきだ、と。
この見解は検証が必要です。それが、私がこの報告書を依頼した理由です:気候変動とエネルギーに関するより深く、科学に基づいた議論を促すためです。私の技術的知見を活かし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書、米国政府報告書(NCA)、学術文献をレビューしました。また、この報告書の著者を含む多くの気候科学者と議論を重ねました。