財務省が国内の個人向けに販売している国債が売れ行き好調です。
個人向け国債変動10年物と呼ばれる商品は金利を半年ごとに見直す満期まで10年の国債です。以前の金利が最も低いときに年利わずか0.05%でした。1,000万円購入しても年間に税引き前で5,000円しか利息が入りませんでした。
ところが、直近では1%を超えてきて20倍以上になっています。そこで「高金利」と考える個人が増えているようです。
しかも変動金利型の商品ですから今後市場金利がさらに上昇すれば、利率の見直し時に金利が上昇することもあり得ます。固定金利の商品に比べると、金利上昇には有利であることに間違いはありません。
以前に比べれば確かに高金利ですが、現時点でも利率は年利1%。これを高金利と呼ぶべきかは過去の金利と比較して判断してはいけません。比較すべきはインフレ率です。
1990年代から長期間続いたデフレ環境下では守りの資産として存在感がありましたが、今や私には魅力的に感じられません。
国内の消費者物価上昇率(CPI)が統計上で3%を超え、肌感的にはそれよりも高い上昇を続けている中、金利1%は物足りない気がします。
金利1%でもインフレ率が3%とすれば、実質的な金利はマイナス2%です。現金に持っているよりは1%分マシですが、実質的に目減りしていくわけですから投資商品としての価値は無いでしょう。
日本国債は財政赤字の拡大に伴う金利の上昇懸念から超長期債を敬遠する動きが広がり、日銀の購入も期待できなくなり、買い手不在が問題になっています。
そこに出てきた日本の個人投資家の国債購入の増加。ファイナンシャルプランナーの方の中には投資初心者に向いた商品として積極的な組み入れを提案する人もいるようです。
私には名目金利の錯覚によって財務省のカモにされているようにしか見えません。

財務省Wikipediaより
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。