日本はAIロボットとの親和性が高い
現状では後れを取っているとはいえ、日本では有益なデータが多く集まる可能性があるという。
「日本は20年ほど前にヒト型ロボットをつくって、その時は確かにビジネスという面では失敗したといえるかもしれませんが、かなり貴重な経験を積んでいるともいえます。1960年代以降、日本は無数のロボットを開発・利用してきており、現在のフィジカルAIの流れは非常に日本に向いているはずなのです。過去の経験をバックグラウンドにしながら、産業界・アカデミアに蓄積されたデータを集約して日本全体で活用していけば、いい流れになっていくと考えています」(尾形氏)
データ駆動型ロボットが普及すると、日本の産業界にどのようなメリットが生じるのか。
「すでに配膳ロボットや案内ロボット、警備ロボット、工事ロボットがありますが、これらは実は本来は1台で兼ねることができるものです。ロボットというのは、工場で使われる産業用ロボット以外でも用途の幅がかなり広い。そして、生成AIは汎用のAIなので、翻訳や要約、テキスト生成などさまざまな作業を頼めます。そこで、このような多機能ロボットに汎用AIモデルを適用することで、1台でさまざまなことができるようになると期待できるのです。普及台数が増えてほどほどの価格になってくれば、広い領域で使われるようになると考えられます。
本来ロボットというのは定義的には汎用機械であり、プログラムによって、移動やマニピュレーションなどさまざまな作業について適用できるものです。その制御プログラムの部分が汎用的な生成AIに置き換わるわけです。料理や洗濯、掃除、介護現場で必要な作業を、ある程度でもしてくれるようになれば、活用分野はそれなりに多くなってくると思います。このような汎用型ロボットの開発とAI基盤モデルの構築は同時に取り組んでいく必要があり、この2つがうまくかみ合わさることによって、広い領域でアプリケーション化が進むでしょう。
産業用ロボットも現場で名前をつけて使ったり、ペットロボットがこれだけ流行ったりしている国は珍しいのです。日本はロボットとの親和性が非常に高く、AIロボットも文化として早くかつ広く定着する可能性は高いと思います。すでにAIRoAは国の支援を受けていますが、今後も日本がAIロボットを世界でもっとも開発しやすい国になるように制度設計して頂ければと思っています」(尾形氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=尾形哲也/AIロボット協会理事長)