老後の資金不足への不安が高まっている。一般的に老後には「どのくらい貯金があればよいのか」「自分がいくら備えるべきか」などは気になるところだろう。今回は老後の平均貯金額と老後資金を上手に貯める方法を5つ紹介する。

老後(70代以上)の平均貯金額は1,079万円

気になる老後の平均貯金額だが、金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年)」によれば、二人以上世帯の60歳代の預貯金額平均は987万円。70歳代以上では1,079万円であった。さらに、60歳代以降になると保険や株式など、資産を預貯金以外で保有する割合も高くなっている。

例えば60歳代では生命保険で333万円、個人年金で121万円、株・投資信託で265万円を保有しており、預貯金やその他の商品と合わせると、金融資産の平均は1,849万円となっている。70歳代以上では生命保険243万円、個人年金54万円、株式・投資信託275万円で、金融資産の全体の平均は1,780万円である。

この数値を多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれだろうが、60歳代では約1,000万円の預貯金を保有しているのが平均的といえるだろう。

退職金の平均は大卒で1,983万円

老後のための資金として退職金を期待している人も多いが、実際に退職金はいくらもらえるのだろうか。2018年時点での退職金の平均額は大卒で1,983万円だ。ただし大卒の退職金推移を見てみると2013年では1,941万円、2008年は2,280万円、2002年時点では2,499万円となっており、年々減少傾向であることがわかる。(厚生労働省発表の2018年「就労条件総合調査」より)

最近では退職金の運用を社員自身に任せる「企業型確定拠出年金」を取り入れている企業も増加傾向だ。運用結果によっては、さらに退職金の額が減少する可能性もありその責任は社員個人にある。退職金を過度に期待せず早いうちから預貯金を増やす意識を持っておきたい。

老後に不足する金額は1,585万円

夫が60歳で会社を定年退職、妻が専業主婦である夫婦が日本人の平均寿命に近い85歳まで生きる場合、どのくらい老後資金が不足するのかシミュレーションしてみよう。

老後にかかる支出は約8,043万円

60歳以降にかかる支出だが、2018年の総務省「家計調査年報」よると二人以上の世帯の消費支出は、60~69歳までは毎月29万1,019円、70歳以上では毎月23万7,034円だった。この数字を参考に60~85歳までの夫婦の生活費を算出してみると以下の計算で求められる。

・29万1,019円(60歳以上の1ヵ月の消費支出)×12ヵ月×10年+23万7,034円(70歳以上の1ヵ月の消費支出)×12ヵ月×16(85歳−69歳)年=約8,043万2,808円

老後にかかる支出は生活費だけではない。歳をとるごとに病院にかかる回数も増えだろうし、若いころに買った住宅であれば修繕・リフォーム代も考えておく必要がある。医療費を300万円、リフォーム費用を300万円、そしてもしものときのための緊急予備資金を500万円として上記の生活費に加えると支出の合計は約9,150万円になる。

8,043万2,808円(60~85歳までの夫婦の生活費)+300万円(医療費)+300万円(リフォーム費用)+500万円(緊急予備資金)=9,143万2,808円

老後に得られる収入は約7,564万円

次に60歳以降に見込める収入を見ていこう。会社員の引退後の収入は、主に年金と退職金である。2019年1月に厚生労働省が発表した夫婦2人分のモデルとなる年金額は毎月22万1,504円だ。(夫が平均月額報酬42万8,000円で40年勤務、同期間妻が専業主婦だった場合)この額を65~85歳までの21年間受け取るとすると合計は以下のようになる。

・22万1,504円(モデルとなる夫婦の1ヵ月の年金額)×12ヵ月×21年=5,581万9,008円

ここに大卒の場合の平均退職金額である1,983万円を得られると仮定した場合、以下のような計算になる。

・5,581万9,008円(65~85歳までの夫婦の年金総額)+1,983万円(大卒の平均退職金額)=7,564万9,008円

老後に不足する金額は、60~85歳の支出から収入を引いた以下の計算で求められる。

・9,143万2,808円(支出)-7,564万9,008円(収入)=1,578万3,800円 

今回は、片働きで夫が60歳で定年退職するという仮定でシミュレーションを行ったが、この状況に当てはまらない場合も多いだろう。共働き家庭や65歳まで再雇用で働く場合、老後の収入はさらに増えると考えられる。それぞれの状況に合わせ老後に必要な資金を算出してみるのがよいだろう。

老後に備えて貯金する5つの方法

老後不足する金額がわかれば、あとはその不足分の資金をどうやって貯めるかが問題だ。今回は老後に備えて今から資金を貯める方法を5つ紹介する。

(1)固定費など生活費の見直し

老後資金が不足する世帯の特徴として考えられるのが、生活水準が下げられないことである。特に食費や交際・レジャー費などは、老後になっていきなり下げることは難しい。毎月かかる固定費は現役のときからきちんと見直し、支出が増えていかないよう注意しておこう。

(2)つみたてNISAやiDeCo(イデコ)を活用

一番に考えたいのが「つみたてNISA」や「iDeCo」などの制度利用である。これらは毎月コツコツと少額を積み立てることで資産形成を促す制度で税制面でも優遇されている。つみたてNISAでは毎年40万円を上限として投資信託が購入可能で運用で出た利益は20年間非課税だ。iDeCoは私的年金の制度で毎月一定額を自分が決めた方法で運用する。

メリットは掛け金が全額「所得控除」され毎年税金が戻ってくることだ。利用する前にどの制度を利用すればよいのか調べておくことが大切だろう。
出典:金融庁『つみたてNISAの概要』
出典:国民年金基金連合会 『iDeCoってなに?』

(3)不動産投資で資産運用

ある程度まとまったお金がある人は、不動産投資で賃貸収入を考えてもいいだろう。空き室リスクなども伴うため、不動産に対する知識はもちろん、信頼できる不動産業者を探しておくなど入念な準備が必要である。

(4)独立、副業、老後も働くなど多様なキャリアを検討する

どんな形であれ、老後も働き収入を得ることは老後資金確保のための最も有効な対策の一つである。例えば年収が300万円でも、5年働く期間を延長するだけで収入は1,500万円増える。企業側でも従業員が定年を過ぎても働くことができるように制度を整える動きが広がっている。具体的には2021年に発表された厚生労働省の「令和2年『高年齢者の雇用状況』集計結果」によると、2020年時点で65歳以上を定年としている企業は全体の33.4%と前年比2.6ポイント増加傾向だ。

(5)持ち家を活用する

子供が独立した世帯であれば、夫婦二人に適した広さのマンションへの住み替えを検討するのもよいだろう。持ち家がある場合は売却したり賃貸として貸し出したりすることで収入を得ることができる。また「リバースモーゲージ」という制度を活用するのも手だ。リバースモーゲージとは持ち家を担保に、そこに住み続けながら金融機関から融資を受けられる商品のこと。

契約者が死亡した後、家を売却して返済に充てるのが一般的で売却額が融資残高を下回っても請求されないことも大きなメリットだ。

老後に必要な貯金額は人それぞれ 入念な準備を

60代の平均の貯金額は987万円、金融資産全体だと1,849万円となっており、金融資産でみれば今回シミュレーションした老後の不足額1,585万円をクリアできていることがわかった。ただしこれらの額はあくまで平均であり生活費や退職金などは各家庭によって大きく異なる。今回のシミュレーションを参考に自分たちに必要な老後資金を把握し現役時代から計画的に不足分を準備しよう。

老後資金を貯めるならまずはiDeCoの検討を

ただ豊かな老後を過ごすためにも、今回のシミュレーション結果よりも老後資金には余裕を持っておきたいと思う人もいるだろう。老後資金を貯める方法をいくつか紹介したが、中でも投資初心者が気軽に始められるiDeCoだ。利益が非課税なだけではなく、掛金に節税効果もあるというのは魅力。ネット証券などで、検討してみるとよいだろう。

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松本雄一

 
執筆・松本雄一

外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。  

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