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小学校に入学する時、多くの子どもたちが大人から言われる言葉があります。「たくさんお友達を作ろうね」。この何気ない一言が、実は多くの人を苦しめる呪縛となることがあります。
SNS時代の今、フォロワー数や「友達」の数が可視化され、その数字があたかも人間としての価値を表すかのような錯覚に陥りがちです。しかし、本当に大切なのは友達の「数」なのでしょうか?
「自分の思いを言葉にする こどもアウトプット図鑑」(樺沢紫苑 著)サンクチュアリ出版
人間関係の限界を知る
イギリスの人類学者ロビン・ダンバーは、興味深い研究結果を発表しています。人間が安定的に維持できる人間関係の数には、生物学的な限界があるというのです。
彼の研究によると、人間が「親友」と呼べるほど親密な関係を維持できるのは、わずか5人程度。さらに、定期的に連絡を取り合える友人関係は15人、顔と名前が一致する知り合いは50人、そして認識できる最大数は150人程度だといいます。
これは「ダンバー数」と呼ばれ、私たちの脳の処理能力に基づく限界なのです。
現代社会では、ビジネス上の人脈や社交的なつながりが重視される傾向があります。確かに、多様な人々とのつながりは、新しい機会や視点をもたらしてくれるでしょう。
しかし、本当に困ったとき、悩みを打ち明けられる相手は何人いるでしょうか?深夜に電話をかけても迷惑がられない相手は?人生の重要な決断を相談できる相手は?
実は、こうした深い信頼関係を築ける相手は、2〜3人いれば十分なのです。いや、たった一人でも、心から信頼できる友人がいれば、それは何百人の知り合いよりも価値があるといえるでしょう。
質の高い関係を築くために
深い人間関係を築くには、時間と労力が必要です。表面的な付き合いなら、挨拶を交わし、時々連絡を取るだけで維持できます。しかし、真の友情を育むには、以下のような要素が不可欠です。
共有する時間の質:一緒に過ごす時間の長さより、その時間の質が重要です。スマートフォンを見ながらの会話より、相手の目を見て話す30分のほうが、はるかに関係を深めます。 相互理解と受容:「一緒にいて居心地がいい」と感じる関係は、お互いを理解し、受け入れることから生まれます。完璧である必要はありません。むしろ、弱さや欠点も含めて受け入れ合える関係こそが、真の友情なのです。 継続的なコミュニケーション:深い関係は一朝一夕には築けません。定期的な連絡、お互いの近況報告、そして何より、相手の話に耳を傾ける姿勢が大切です。