前に『ボードゲームで社会が変わる』を著書でご紹介くださった、米光一成さんが新刊を送ってくださった。デジタルで『ぷよぷよ』、アナログで『はぁって言うゲーム』を大ヒットさせたゲーム作家が、創作に満ちた実人生を語っている。

……と聞くと、今日では「これがヒットを生み出すコツです」的なハウツー本を、つい連想する。なにか劇的な人生の画期みたいなものがあり、この経験があの作品に実を結ぶ! なサクセス・ストーリーを予感するわけだ。

が、誠実な著者(米光氏)は、そんなものはない。むしろ、そうした期待を持つこと自体が罠だと、はっきり書いている。

「ゲーム作家の全思考」

ものづくりのきっかけは何か、どうやってアイデアが閃いたのかという質問をたびたびされるが、ほんとうのところは「これまでの人生のあれもこれも」なのだ。ところが、こんな答えではインタビュアーは許してくれない。 (中 略) だいたいの場合、創作のきっかけとして「人生のあれもこれも」なんて答えたら、その部分はカットされる。卑近なきっかけを答えた部分がおもしろおかしく紹介されるだけだ。

4-5頁(強調は引用者)

これをわかんない人、すっごい増えてますよね。創作の秘訣に限らず、メディアで流通するのはストーリーであり、そこで語られる「因果関係」は後づけで作られた・演出されたものなんだっていう常識が、消えている。

なんでそうなるのか。ストーリーを「練り上げる」ことのプロが減り、アマチュアがばんばん配信する時代になったのは大きいだろう。意識高い系のSNSとかを想定すると、わかりやすい。