悪夢が蘇らせる「消された記憶」

 事件から数年、4人はそれぞれ奇妙な悪夢にうなされ始める。内容は驚くほど似通っていた。大きな黒い目を持つ人型の存在、冷たい金属の部屋、医療的な処置、そして意思に反して拘束されている感覚…。

 増していく悪夢の強度に耐えかねた彼らは、退行催眠の専門家である精神科医アンソニー・コンスタンティーノ博士の助けを借りることを決意する。催眠下で語られた内容は衝撃的だった。4人はそれぞれ別々にセッションを受けたにもかかわらず、その証言は細部に至るまで完全に一致していたのだ。

 彼らは、光のビームによって身動きを封じられ、宇宙船に連れ去られ、人間ではない存在による身体検査を受けた後、解放されたと語った。その存在は、小柄で細身、灰色の肌に大きなアーモンド形の黒い目を持ち、テレパシーで交信してきたという。彼らに怒りや同情といった感情はなく、まるで臨床技師のように淡々と処置を進めていた、と。

UFO史の最重要ミステリー「アラガッシュ事件」催眠下で暴かれた4人の男たちの“完全一致”する悪夢の画像3
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

なぜこの事件は信憑性が高いのか?

 アラガッシュ事件が他のアブダクション事件と一線を画すのは、その証言の驚くべき一貫性にある。4人の証言者たちは、注目を集めたいような人物ではなく、それぞれが大学を卒業し、アーティストとして堅実なキャリアを歩んでいた。

 当初は懐疑的だったコンスタンティーノ博士も、「もしこれが作り話だとしたら、私がこれまで聞いた中で最も見事で、一貫性があり、感情的に説得力のある創作だ」と断言している。

 さらに、腕時計の停止、失われた時間、断片的な記憶の回復といった現象は、世界中のUFO事件に記録されている典型的なアブダクション事例の特徴と一致する。彼らはその後、ポリグラフ検査(嘘発見器)もすべてクリアしているのだ。

残された謎と、静かなる余韻

 集団幻覚で片付けるには、あまりにも証言の辻褄が合いすぎる。では、あの夜、忘れ去られた川の上で一体何が起きたのだろうか。彼らは本当に異星からの訪問者に遭遇したのか。それとも、未知の力によって引き起こされた、深層心理の旅だったのか。

 アラガッシュ事件は、派手な演出のないからこそ、かえって現実感を持つ。人間が意図せず出会ってしまった“何か”。それは今も、メイン州の深い森と静かな水面に沈黙のまま残っているのかもしれない。

参考:Mysterium Incognita、ほか

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