「最近ちゃんと寝てるのに、朝起きても頭が重い」「日中もぼーっとして集中できない」そんな疲れが抜けない感覚に悩んでいる人は多いかもしれません。
また「理由もなく気分が落ち込む」「前よりやる気が出ない」といった、精神的な不調も日常の中でよくある症状です。
こうした身体的なだるさと、気分の沈み込みは一見、別々の問題に思えますが、じつは体の中で起きている“同じ現象”が関係しているかもしれません。
オーストラリアのシドニー大学(The University of Sydney)のジョアン・S・カーペンター氏(Joanne S. Carpenter)らの研究チームによると、体内時計に関わる複数の生理的リズムが互いにズレている人ほど、気分の落ち込みが強い傾向にあると報告。
これは「体内の時差ぼけ」が、日常の中で知らず知らずのうちにメンタルにダメージを与えている可能性を意味します。
この研究の詳細は、2025年7月付けで科学雑誌『Journal of Biological Rhythms』に掲載されています
目次
- 体の中で起きる“時間のズレ”とは?
- 3つのリズムを同時に測ると、見えてきた“心のズレ”
- 今回の結果から示される、気分を安定させる方法
体の中で起きる“時間のズレ”とは?

日中の活動や気分の調子が、なぜかうまく整わない。そんな不調の背景には、私たちの体に本来備わっている「リズム」の乱れが関係している可能性があります。
人間の体は、表面からは見えませんが、24時間の周期に従って多くの機能が連動しています。朝になると体温が上がり、活動の準備が始まり、夜になると眠気を誘うホルモン「メラトニン(melatonin)」が分泌されて休息モードに切り替わる。
こうしたリズムをつくっているのが、「体内時計(概日リズム、英語ではcircadian rhythm)」です。
体内時計の中枢は、脳の視床下部という場所にある「視交叉上核(suprachiasmatic nucleus)」と呼ばれる神経の集まりです。この視交叉上核が、目から入ってくる光の情報をもとに全身のリズムを調整しており、いわば身体の“時刻合わせ係”のような役割を果たしています。