選挙が終わったあとの政治家に課される、静かなる試練——それが「御礼のごあいさつ」です。
選挙期間中にお世話になった方々、応援してくださった方々、陰ながら支えてくださった方々へ、感謝の気持ちを伝えるのは当然の礼儀。候補者としての最低限の務めであり、むしろ心から「ありがとうございました」と伝えたいと思っています。
しかし、それがなかなか思うように進まないのが、落選直後の現実です。
体力は選挙戦で限界まで削られ、気力ももうほとんど残っていない。そんな中で一人ひとりに連絡を取り、感謝を伝えていく作業は、言ってしまえば「感謝の気持ちでいっぱいの、精神的デスマーチ」。
とくに電話。苦手です。
なぜなら、うっかり番号を間違えることがあるからです。人間、疲れていると本当にやらかします。
「はい、◯◯です」
「あっ、お世話になっております、おときたで…」
「……は?違いますよ!!チッ、ガチャッ」
こんなふうに軽く怒られると、摩耗しているメンタルにズドンと追加ダメージが入り、しばしフリーズ。再起動まで数分を要します。
もちろん、こちらが100%悪い。申し訳ない気持ちしかない。
けれど、電話というのはどうしても「相手の時間を一方的に奪う」側面があります。忙しい中で電話に出てくださるのはありがたい半面、「いまじゃないんだよ…」というタイミングもあるはず。
だからこそ、私はできる限り、メールやLINE、SNSのDMなど、相手が読めるタイミングで確認してもらえる形でご連絡するようにしています。
しかし、これもまた悩ましいのです。
「電話もしないなんて失礼だろ!」「落選しておいてメールだけか!」
とお叱りを受けることも、正直あります。
政治家という職業は、人と人のつながりで成り立っています。だからこそ、対面でのあいさつが一番大事であることも痛いほどわかっています。でも、すべての方に直接伺うには時間も体力も、正直限界があります。