そもそも首相の発言は、日本語としても不自然である。「米国との関税交渉あるいは物価高、明日起こるかもしれない首都直下型地震、あるいは南海トラフそのような自然災害」という表現は、文法的に破綻している。
「あるいは」という接続詞の使い方が一貫せず、「南海トラフそのような」の部分では助詞が脱落し、文章の流れが途切れている。これは単なる言い間違いではなく、論理的思考の混乱を反映しているように見える。
政治的課題と自然災害を無理やり結びつけようとした結果、日本語の構造そのものが崩壊してしまったのだ。国のリーダーが国民に向けて発する言葉としては、あまりにも稚拙であり、この言語能力の欠如もまた、続投への疑問を深めるものである。
今回の選挙結果は、裏金問題への対応の甘さ、物価高への無策、そして国民の声に耳を傾けない姿勢への明確な審判だった。
石破首相が本当に「国難」を憂うのであれば、現在の政治的混乱を打開する道を真剣に模索すべきだろう。7月23日の関税交渉妥結を契機に、その内容と影響を国民に丁寧に説明し、理解を求める努力も必要だ。国民が求めているのは、選挙結果を真摯に受け止め、政治の信頼回復に向けた具体的な行動である。
今後の政権運営においては、野党との建設的な対話を進め、国民の声により一層耳を傾ける姿勢が不可欠だ。それができなければ、政治不信がさらに深まることは避けられない。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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